## 20代のためのシェーラー「宇宙における人間の位置」
20代は、アイデンティティの模索、将来への不安、社会との関わり方など、様々な課題に直面する時期です。自分とは何か、世界の中で自分はどのような存在なのか、といった根源的な問いを抱える人も少なくないでしょう。そんな20代にとって、ドイツの哲学者マックス・シェーラーの主著「宇宙における人間の位置」は、自己理解を深め、世界観を拡張する上で大きな示唆を与えてくれる可能性を秘めています。
シェーラーにおける人間の特異性
シェーラーは、この著作において、人間を他の生物と区別する「人間とは何か」という問いに正面から取り組んでいます。彼は、生命の進化という観点から、植物、動物、そして人間を比較し、人間だけが持つ特異な能力を明らかにしようと試みました。シェーラーによれば、植物は環境に「開かれた」存在であり、受動的に環境に適応することで生命を維持します。一方、動物は環境に「中心的に閉じている」存在であり、能動的に環境を把握し、衝動に基づいて行動します。そして、人間は動物よりもさらに高次の段階に位置づけられ、「開かれた中心」を持つ存在として特徴づけられます。
「精神」という人間の特質
人間を他の生物から区別する最大の要素としてシェーラーが挙げているのが「精神」です。シェーラーは、精神を「対象をそれ自体として捉える能力」と定義しています。動物は、環境を自己保存や種の保存といった生存本能と結びつけて捉えます。しかし、人間は、生存本能とは無関係に、対象を客観的に認識し、その本質を理解することができます。例えば、美しい景色を眺めて感動したり、芸術作品に心を揺さぶられたりするのは、人間だけが持つ精神の働きによるものです。
「世界開放性」という人間の可能性
シェーラーは、精神を持つ人間は、「世界開放性」という能力を獲得したと述べています。これは、あらゆる既成の価値や枠組みに囚われず、自由に世界を捉え直し、新しい価値を創造していく能力です。人間は、精神によって、自己の限界を超え、無限の可能性に向かって開かれている存在と言えるでしょう。
「愛」と「精神的価値」への志向
シェーラーは、人間の精神活動の根底には、「愛」という衝動があると主張します。愛とは、対象の本質的な価値を見抜き、それに没頭することです。シェーラーは、愛を通して、人間は物質的な価値を超えた「精神的価値」へと向かうことができると考えました。真・善・美といった普遍的な価値を追求し、自己実現を目指すことは、人間にとっての本質的な課題と言えるでしょう。
20代における「宇宙における人間の位置」との出会い
20代は、自己と世界に対する問いを深め、自分自身の生き方を模索していく重要な時期です。シェーラーの「宇宙における人間の位置」は、人間存在の本質や可能性について深く考察した哲学書であり、20代の読者に、自己理解を深め、世界観を拡張する上で貴重な示唆を与えてくれるでしょう。シェーラーの思想に触れることで、人間としての可能性や責任を改めて認識し、より豊かな人生を歩むためのヒントを得られるかもしれません。
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読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。