シェイクスピアの作品は、人間の本質を鋭く描写し、時代を超えて愛され続けています。その登場人物たちは、個性豊かで複雑な心理描写がなされており、MBTIを用いた分析は、彼らの行動や動機をより深く理解するための有効なツールとなりえます。
以下に、シェイクスピアのさまざまな登場人物をMBTIで分析し、解説を試みます。
分析にあたり、いくつかの留意点を記します。
- 登場人物のMBTIタイプは、あくまで推測であり、確定的なものではありません。
- 同じMBTIタイプであっても、育った環境や経験によって、行動や思考パターンは大きく異なる可能性があります。
- 以下は、登場人物の性格、行動、発言、人間関係などを総合的に判断し、MBTIの理論に基づいて分析した結果です。
1. ハムレット (INTP – 論理学者)
- 作品: ハムレット
- 主な特徴: 知性、内省、懐疑主義、決断力のなさ、複雑な思考、理想主義、完璧主義
ハムレットは、常に自己の内面と向き合い、物事の本質を深く探求しようとします。彼の知性と洞察力は鋭く、周囲の人々の偽善や欺瞞を見抜くことができます。しかし、彼は行動に移すことよりも、思考に耽ることが多く、優柔不断な面が目立ちます。彼の行動は、論理的な思考に基づいているように見えますが、その根底には、彼自身の倫理観や理想主義が強く影響しています。
INTPは、論理的思考と深い洞察力を持ち、複雑な問題を分析することに長けています。一方で、感情表現が苦手で、決断を先延ばしにする傾向があります。ハムレットの性格は、INTPの特徴とよく合致しています。
2. ロミオ (ENFP – 提唱者)
- 作品: ロミオとジュリエット
- 主な特徴: 情熱的、ロマンチスト、理想主義、衝動的、感情表現豊か、カリスマ性
ロミオは、ジュリエットへの激しい恋に突き動かされる、情熱的でロマンチックな人物です。彼は愛や美を理想化し、感情を率直に表現します。周囲の人々を魅了するカリスマ性も持ち合わせています。一方で、衝動的な行動が目立ち、周囲の状況や結果を十分に考慮せずに、感情のままに行動してしまうことがあります。
ENFPは、情熱的で、理想主義、自由奔放な性格で、周囲の人々を魅了するカリスマ性があります。ロミオの性格は、ENFPの特徴によく合致しており、彼の衝動的な行動やロマンチシズムは、ENFPが持つ強い感情表現と関連付けることができます。
3. ジュリエット (INFP – 仲介者)
- 作品: ロミオとジュリエット
- 主な特徴: ロマンチスト、繊細、内向的、情熱的、献身的、強い意志
ジュリエットは、内向的で繊細な少女ですが、ロミオと出会い、激しい恋に落ちます。彼女は、ロミオへの愛に全てを捧げ、強い意志と行動力で、困難な状況にも立ち向かいます。彼女の行動は、内面の強い信念と価値観に基づいており、愛や美に対する強い憧れを持っています。
INFPは、ロマンチストで繊細な性格で、内面に強い情熱と信念を持っています。ジュリエットの性格は、INFPの特徴とよく合致しており、彼女が貫く強い意志や献身的な愛は、INFPが持つ深い愛情表現と関連付けることができます。
4. オセロ (ESTJ – 管理者)
- 作品: オセロ
- 主な特徴: 実直、責任感強、決断力、統率力、嫉妬深い、頑固、疑り深い
オセロは、軍人としての能力に優れ、周囲からの信頼も厚い人物です。彼は、責任感強く、規律を重んじ、決断力と行動力に溢れています。一方で、自分の感情をコントロールすることが苦手で、イアーゴーの策略によって、デズデモーナへの疑念を深め、嫉妬に駆られて破滅へと向かいます。
ESTJは、責任感と統率力に優れ、組織や社会の中でリーダーシップを発揮するタイプです。オセロの軍人としての能力や決断力は、ESTJの特徴とよく合致しています。一方で、ESTJは、感情表現が苦手で、状況を客観的に判断できない場合、頑固になったり、疑り深くなったりする傾向があり、オセロの嫉妬深い性格は、ESTJの弱点を反映しているとも言えます。
5. デズデモーナ (ISFJ – 守護者)
- 作品: オセロ
- 主な特徴: 献身的、温厚、誠実、従順、周囲への配慮、自己犠牲的
デズデモーナは、純粋で温厚な女性であり、オセロを深く愛しています。彼女は、周囲の人々に優しく、献身的に尽くします。夫であるオセロに対しては、従順で、彼を支えようとしますが、彼の疑念を払拭することができず、悲劇的な結末を迎えます。
ISFJは、温厚で献身的な性格で、周囲の人々を支え、調和を重んじます。デズデモーナの性格は、ISFJの特徴とよく合致しており、彼女の献身的な愛や周囲への配慮は、ISFJが持つ深い愛情表現と関連付けることができます。
6. マクベス (ENTJ – 指揮官)
- 作品: マクベス
- 主な特徴: 野心的、決断力、行動力、冷酷、支配欲、権力志向
マクベスは、魔女の予言に導かれ、野心を燃やす将軍です。彼は、王になるため、次々と非情な行動をとります。冷酷な性格で、目的のためには手段を選ばない一面も持っています。一方で、罪悪感や不安にさいなまれる場面もあり、彼の内面は葛藤に満ちています。
ENTJは、野心的で決断力に優れ、戦略的思考とリーダーシップで目標を達成するタイプです。マクベスの野心や行動力は、ENTJの特徴とよく合致しています。一方で、ENTJは、目的のためには手段を選ばない一面があり、マクベスの冷酷な行動は、ENTJの持つ冷徹さを反映しているとも言えます。
7. リア王 (ENFJ – 主人公)
- 作品: リア王
- 主な特徴: 権威主義的、誇り高い、感情的、周囲への依存、愛情を求める、裏切られた時の落胆
リア王は、老齢の王であり、娘たちに愛情を求め、権力を譲ろうとします。彼は、誇り高く、感情的な性格で、周囲からの承認を求めます。しかし、娘たちの裏切りによって、深い悲しみと絶望に突き落とされ、狂気に陥ります。
ENFJは、カリスマ性と共感力に優れ、周囲の人々を導き、調和をもたらすリーダーシップを発揮するタイプです。リア王は、王としての威厳やカリスマ性を持っている一方、感情的に不安定で、周囲からの愛情や承認に依存しています。彼の性格は、ENFJの特徴と合致する部分もありますが、ENFJは一般的に感情のコントロールに長けているため、リア王の極端な感情表現は、彼の性格の弱点を強調していると言えるかもしれません。
8. イアーゴー (INTJ – 建築家)
- 作品: オセロ
- 主な特徴: 知的、戦略的、冷酷、陰謀家、目的のためには手段を選ばない、自己中心的
イアーゴーは、オセロに復讐するため、周到な計画を立て、巧みな話術で周囲の人々を操ります。彼は、知性と洞察力に優れ、人の心理を巧みに利用します。冷酷な性格で、自分の目的のためには、手段を選ばない狡猾さを持っています。
INTJは、戦略的思考と論理的分析力に長け、独自の方法で目標を達成しようとするタイプです。イアーゴーの知性、戦略性、冷酷さは、INTJの特徴とよく合致しています。INTJは、時に目的のためには手段を選ばない一面があり、イアーゴーの陰謀や策略は、INTJの持つ冷徹さを極端に表していると言えるかもしれません。
9. フォルスタッフ (ESTP – 起業家)
- 作品: ヘンリー四世、ウィンザーの陽気な女房たち
- 主な特徴: 陽気、機知に富む、享楽的、大胆、現実主義、衝動的、無責任
フォルスタッフは、陽気で機知に富んだ人物で、酒と女を愛し、享楽的な日々を送っています。彼は、大胆で機転が利き、周囲の人々を笑わせる才能を持っています。しかし、無責任で、約束を守らなかったり、嘘をついたりすることも多く、彼の行動は、周囲に混乱をもたらすこともあります。
ESTPは、現実主義で行動派、その場の状況に合わせて臨機応変に対応するタイプです。フォルスタッフの陽気さ、機転の良さ、大胆さは、ESTPの特徴とよく合致しています。一方で、ESTPは、衝動的で、計画性や責任感に欠ける一面があり、フォルスタッフの無責任な行動は、ESTPの弱点を反映しているとも言えます。
10. シャイロック (INTJ – 建築家)
- 作品: ベニスの商人
- 主な特徴: 知的、論理的、冷静、冷淡、融通がきかない、正義を重視
シャイロックは、頭脳明晰で論理的な思考をする人物です。彼は、法律や契約を重視し、冷静に物事を判断します。アントーニオとの契約を厳格に履行しようとする姿は、冷酷にも見えますが、彼自身の正義に基づいた行動です。
INTJは、知性と戦略性、論理的思考力に優れ、独自の方法で目標を達成するタイプです。シャイロックの知性、論理性、冷静さは、INTJの特徴とよく合致しています。INTJは、時に融通がきかず、感情を考慮しない一面があり、シャイロックの冷淡な態度は、INTJの持つ冷徹さを反映しているとも言えます。
11. ポーシャ (ENTJ – 指揮官)
- 作品: ベニスの商人
- 主な特徴: 知的、機知に富む、勇敢、リーダーシップ、正義感、行動力
ポーシャは、知性と美貌を兼ね備えた女性です。彼女は、男装して法廷に立ち、アントーニオを救うため、機知に富んだ弁論を展開します。勇敢で決断力があり、正義を貫く強い意志を持っています。
ENTJは、知性とリーダーシップ、戦略的思考力に優れ、目的を達成するために努力するタイプです。ポーシャの知性、勇敢さ、行動力は、ENTJの特徴とよく合致しています。ENTJは、正義感強く、リーダーシップを発揮する一面があり、ポーシャが法廷で見せる行動は、ENTJの強さを象徴していると言えるでしょう。
12. キャサリン (ISTP – 職人)
- 作品: じゃじゃ馬ならし
- 主な特徴: 独立心旺盛、反抗的、率直、行動派、現実主義、自分の道を進む
キャサリンは、独立心が強く、周囲の意見に流されず、自分の考えを貫く女性です。彼女は、率直な物言いと反抗的な態度で、周囲を困らせることもありますが、 ペトルーチオの策略によって、徐々に自分の感情を理解し、彼と心を通わせていきます。
ISTPは、独立心が強く、現実主義で、行動力に溢れるタイプです。キャサリンの反抗的な態度や率直さは、ISTPの特徴とよく合致しています。ISTPは、自分の興味のある分野に熱中し、独自の方法で問題を解決しようとします。キャサリンが ペトルーチオ との関係を通して成長していく姿は、ISTPが持つ潜在的な能力と適応力を示していると言えるでしょう。
13. ヘンリー五世 (ESTP – 起業家)
- 作品: ヘンリー五世
- 主な特徴: 行動派、カリスマ性、勇敢、現実主義、決断力、リーダーシップ
ヘンリー五世は、若くして王位に就き、フランスとの戦争に挑む王です。彼は、勇敢で決断力があり、兵士たちを鼓舞するカリスマ性を持っています。現実主義的な思考で、戦況を冷静に判断し、勝利のために戦略を練ります。
ESTPは、行動力とカリスマ性、現実主義的な思考力、臨機応変な対応力に優れるタイプです。ヘンリー五世の勇敢さ、決断力、リーダーシップは、ESTPの特徴とよく合致しています。ESTPは、困難な状況にも臆することなく、行動を起こし、周囲の人々を巻き込みながら目標を達成しようとします。
14. クレシダ (ESFP – エンターテイナー)
- 作品: トロイラスとクレシダ
- 主な特徴: 社交的、魅力的、感情表現豊か、享楽的、移り気、周囲に流されやすい
クレシダは、魅力的で社交的な女性です。彼女は、トロイラスを愛しますが、周囲の状況や影響によって、彼を裏切ってしまいます。彼女の行動は、感情的で衝動的であり、周囲に流されやすい面も持ち合わせています。
ESFPは、社交的で、感情表現豊かで、周囲の人々を楽しませるのが好きなタイプです。クレシダの魅力や社交性は、ESFPの特徴とよく合致しています。ESFPは、その場の雰囲気や感情に流されやすい一面があり、クレシダがトロイラスを裏切る行動は、ESFPの弱点を反映しているとも言えます。
15. コーディリア (INFJ – 提唱者)
- 作品: リア王
- 主な特徴: 忠実、献身的、愛情深い、洞察力、理想主義、傷つきやすい
コーディリアは、リア王の三女であり、父を心から愛し、忠誠を誓っています。彼女は、姉妹の策略によって、父から追放されますが、それでも父の身を案じ、献身的に尽くします。洞察力に優れ、人の心の奥底を見抜くことができます。
INFJは、理想主義的で、強い共感力と洞察力を持つタイプです。コーディリアの忠誠心、献身的な愛、洞察力は、INFJの特徴とよく合致しています。INFJは、内向的で繊細な一面があり、コーディリアが姉妹の裏切りによって傷つく姿は、INFJの持つ繊細さを反映していると言えるかもしれません。
16. プロスペロー (INTJ – 建築家)
- 作品: テンペスト
- 主な特徴: 知的、戦略的、支配的、孤独を愛する、復讐心、魔法の力
プロスペローは、魔法の力を持つ公爵であり、島に幽閉され、復讐の機会を伺っています。彼は、知性と戦略性に優れ、周到な計画を立てて、周囲の人々を操ります。孤独を愛し、自分の内面世界に深く沈潜する一面も持っています。
INTJは、知性と戦略的思考力に優れ、独自のビジョンを持って目標を達成しようとするタイプです。プロスペローの知性、戦略性、支配欲は、INTJの特徴とよく合致しています。INTJは、独立心が強く、時に復讐心や支配欲が強くなる傾向があり、プロスペローの性格は、INTJの持つ力強さと冷徹さを反映していると言えるでしょう。
上記は、ほんの一例であり、シェイクスピアの作品には、他にも MBTI 分析が可能な魅力的な人物が数多く登場します。 彼らの性格や行動パターンをMBTIの視点から考察することで、作品への理解を深めることができるでしょう。
例えば:
- シーザー (ESTJ – 管理者): ユリウス・シーザーに登場するローマの将軍。責任感強く、決断力に優れ、組織を統率する能力が高い。一方で、権力欲が強く、周囲の意見に耳を傾けない一面も。
- クレオパトラ (ENFJ – 主人公): アントニーとクレオパトラに登場するエジプトの女王。魅力的でカリスマ性があり、周囲の人々を魅了する。一方で、感情的に不安定で、周囲の状況に翻弄される一面も。
- イモージェン (INFJ – 提唱者): シンベリンに登場する英国王女。忠実で愛情深く、強い意志と行動力を持つ。一方で、繊細で傷つきやすく、周囲の影響を受けやすい一面も。
- リチャード三世 (ENTP – 提唱者): リチャード三世に登場する英国王。知性と狡猾さを持ち、権力欲に駆られて陰謀を企てる。一方で、大胆で機転が利き、周囲を翻弄する一面も。
- ビアトリス (ENFP – 提唱者): 空騒ぎに登場するヒロイン。機知に富み、活発で、周囲を明るくするムードメーカー。一方で、感情的で衝動的、周囲の状況に振り回される一面も。
- マリア (ESFP – エンターテイナー): 十二夜に登場するヒロインの侍女。陽気で社交的、周囲を巻き込んで楽しむことが好き。一方で、軽薄で移り気、周囲の状況に流されやすい一面も。
- タイタス・アンドロニカス (ISTJ – 論理学者): タイタス・アンドロニカスに登場するローマの将軍。責任感強く、忠実で、規律を重んじる。一方で、融通がきかず、状況の変化に対応できない一面も。
シェイクスピアの登場人物たちは、複雑な人間模様を描き出すために、多面的な性格を与えられています。MBTIは、彼らの内面世界を深く探求し、作品への理解を深めるための、有効なツールとなりうるでしょう。