## J・S・ミルの経済学原理の話法
### ミルの経済学原理における論理展開
J・S・ミルの『経済学原理』は、演繹的な論理展開と帰納的な論理展開を巧みに組み合わせることで、当時の経済学の体系化を試みた著作として知られています。
### 演繹法の使用と限界の認識
ミルは、リカードなど古典派経済学者が依拠した演繹法を積極的に用い、経済現象の背後にある普遍的な法則を明らかにしようとしました。
例えば、彼は人間の労働を「自然の力に対する人間の活動」と定義し、そこから価値の概念を導き出す論理を展開します。
しかし、ミルは演繹法の限界も認識しており、『経済学原理』の中で、経済学は人間の行動を扱う以上、数学のような厳密な法則を導き出すことはできないと明言しています。
### 帰納法と歴史的・制度的要因の重視
演繹法の限界を踏まえ、ミルは帰納法を用い、歴史的・制度的要因が経済現象に与える影響を分析することにも力を注ぎました。
彼は、土地所有制度や分配制度などが経済活動に大きな影響を与えると考え、現実の経済を理解するためには、これらの制度の歴史的な発展過程を分析することが不可欠だと主張しました。
### 豊富な事例と統計データの活用
ミルは、自らの主張を裏付けるために、歴史上の様々な事例や当時の最新の統計データを積極的に引用しています。
例えば、彼は保護貿易政策の是非を論じる際に、イギリスやフランスなど各国の歴史的な貿易政策とその結果を比較分析し、自由貿易の優位性を主張しました。
### 明晰で平易な文章と論理展開
ミルは、難解な経済学の理論を一般の人々にも理解してもらえるよう、明晰で平易な文章で『経済学原理』を執筆しました。
彼は、複雑な論理展開を行う場合でも、読者が理解しやすいよう、段階的な説明を心がけ、具体例を交えながら論理を展開しています。