## J・S・ミルの経済学原理の秘密
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ミルの経済思想における位置づけ
ジョン・スチュアート・ミル(1806-1873)は、19世紀イギリスを代表する功利主義者であり、経済学者です。彼の主著『経済学原理』(Principles of Political Economy)は、1848年に初版が出版され、その後もミル自身によって改訂が重ねられました。この著作は、古典派経済学の集大成であると同時に、社会主義の影響も受けた独自の視点を示すものであり、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、経済学の標準的な教科書として広く読まれました。
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生産と分配に関するミルの見解
ミルは、『経済学原理』において、経済現象を「生産」と「分配」の二つの側面から分析しました。彼は、生産については、労働、資本、土地の三要素が不可欠であるという古典派経済学の考え方を踏襲しました。しかし、分配については、それが自然法則によって決定されるものではなく、社会制度や慣習によって大きく左右されると主張しました。これは、当時の社会主義思想の影響を受けたものであり、ミルの経済思想における独自性を示す点と言えるでしょう。
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ミルの経済思想における政府の役割
ミルは、自由放任主義を基本としながらも、政府による一定の介入の必要性を認めました。彼は、貧困や教育、労働問題など、市場メカニズムだけでは解決できない社会問題に対しては、政府が積極的に関与すべきだと考えました。具体的には、累進課税や相続税の導入、労働時間の規制、教育機会の均等化などを提唱しています。これらの主張は、当時のイギリス社会における貧富の格差や労働問題の深刻さを反映したものであり、後の社会政策にも大きな影響を与えました。
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『経済学原理』の影響と評価
『経済学原理』は、出版後、大きな反響を呼び、19世紀後半の経済学に多大な影響を与えました。特に、分配に関するミルの分析は、後の経済学者たちに多くの議論を巻き起こしました。また、政府の役割に関する彼の見解は、社会政策の展開にも大きな影響を与え、現代福祉国家の思想的基盤の一つとなりました。