## Ｊ・Ｓ・ミルの経済学原理の価値
ミルの思想が経済学に与えた影響
ジョン・スチュアート・ミルは、19世紀イギリスの哲学者、経済学者であり、その主著『経済学原理』（1848年）は、古典派経済学を体系化し、後の経済学に多大な影響を与えました。
古典派経済学の体系化
ミルは、アダム・スミスやデヴィッド・リカードらの古典派経済学の理論を継承しつつ、それらを体系化し、より洗練されたものにしました。特に、価値論における生産費説の展開、分配論における階級間の利害対立の分析、国際貿易論における比較生産費説の精緻化などは、ミルの貢献として高く評価されています。
経済学における方法論の提唱
ミルは、経済学における演繹法と帰納法の重要性を説き、経済現象を分析するための厳密な方法論を提唱しました。彼は、経済学が他の社会科学と同様に、人間の行動に関する経験的な観察に基づく必要があることを強調しました。
社会改革への積極的な関与
ミルは、単なる経済学者ではなく、社会改革にも積極的に関与した思想家でした。彼は、個人の自由と社会正義の実現を目指し、労働者階級の生活水準向上や女性の権利拡大などを訴えました。彼の経済学は、こうした社会改革の思想的基盤となったと言えます。
現代経済学への影響
ミルの経済学は、現代の経済学にも一定の影響を与え続けています。特に、彼の功利主義に基づく福祉経済学の考え方は、現代の経済政策論の基礎となっています。また、彼の自由主義的な思想は、市場メカニズムの重要性を説く新自由主義経済学にも通じるものがあります。