J・S・ミルの経済学原理に影響を与えた本
影響を与えた本:デヴィッド・リカード著「経済学および課税の原理」
ジョン・スチュアート・ミルは、19世紀のイギリスを代表する哲学者、経済学者の一人であり、その主著「経済学原理」(1848年) は古典派経済学を体系化した著作として知られています。 このミルの経済学思想に大きな影響を与えた一冊の本が、デヴィッド・リカードの「経済学および課税の原理」(1817年)です。
リカードは、労働価値説に基づいて経済現象を分析し、地代論、賃金論、利潤論などを展開しました。 特に、穀物の輸入制限による地主の利益と資本家の負担を論じた地代論は、後の自由貿易論の基礎となるものでした。
ミルは、リカードの著作を深く研究し、その影響を色濃く受けました。 ミルの「経済学原理」は、リカードの理論を継承・発展させたものとして位置づけられます。 例えば、リカードの地代論を継承し、土地の私的所有を批判的に考察しています。 また、リカードの比較生産費説に基づいて国際貿易の重要性を説き、自由貿易を擁護しました。
しかし、ミルはリカードの理論を単に踏襲しただけではありません。 リカードの限界効用概念の欠如を補い、需要と供給の関係から価値を説明しようと試みました。 これは、後の限界効用学派の先駆的な考えとして評価されています。
さらに、ミルはリカードの経済学を社会思想へと発展させました。 労働者階級の状況改善のために、教育の普及や相続税の導入などを主張しました。 また、女性の社会進出を訴えるなど、リベラリズムの立場から社会改革を主張しました。
このように、ミルの「経済学原理」は、リカードの「経済学および課税の原理」の多大な影響を受けながらも、独自の理論展開や社会思想を盛り込んだ、古典派経済学の金字塔と言えるでしょう。