## Ｊ・Ｓ・ミルの女性の解放の思想的背景
ミルにおける女性の解放思想の根幹：功利主義
ジョン・スチュアート・ミルは、ベンサムの思想を受け継ぐ功利主義者として知られています。彼の思想の根底には、「最大多数の最大幸福」という功利主義の原則が流れています。ミルは、女性の社会進出を阻む従来の慣習や法律は、女性のみならず、社会全体にとって幸福をもたらさないと考えました。
女性の抑圧：不当な偏見と差別
ミルは、当時の社会における女性の立場を、男性による不当な偏見と差別によって抑圧された状態と見なしました。彼は、女性が教育や就労、政治参加といった権利を認められていない状況を、個人の能力を十分に発揮できない不合理な状態だと批判しました。
啓蒙主義の影響：理性と個人の自由
ミルの思想には、啓蒙主義の影響が色濃く反映されています。彼は、人間は生まれながらにして理性を持つ存在であり、自らの能力を最大限に発揮する自由を持つべきだと主張しました。女性もまた、男性と同様に理性と自由を持つ個人である以上、その権利は保障されるべきであるとミルは考えました。
ハリエット・テイラー・ミルとの共著：「女性の隷従」
ミルの女性の解放思想は、妻ハリエット・テイラー・ミルとの共著『女性の隷従』(The Subjection of Women, 1869) において明確に示されました。この書の中で二人は、女性の社会的地位の向上こそが、社会全体の幸福に繋がるという信念に基づき、女性の権利拡大を力強く訴えました。