## J・S・ミルの女性の解放の対極
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ジャン・ジャック・ルソーの『エミール』における女性の教育観
ジャン・ジャック・ルソーの『エミール』(1762年)は、当時の西洋社会において大きな影響力を持った教育論であり、その内容は、自然状態における人間の善性を前提とし、理性と感性の調和のとれた人間形成を目指していました。 しかし、ルソーの教育論は、男女で明確な役割分担を想定しており、女性を男性に従属的な存在と捉える性差別的な側面も持ち合わせていました。
ルソーは、『エミール』の中で、理想の女性像として、男性である主人公エミールの妻となるソフィーを提示します。ソフィーは、優しく貞淑で、男性を支え、家庭を守ることに喜びを見出す女性として描かれています。 ルソーは、女性の役割は男性を喜ばせること、家庭を守ること、そして子供を産み育てることであると規定し、女性は男性を補完するために存在するとしました。
教育に関しても、ルソーは男女で明確な違いを設けました。 男性であるエミールには、理性的な判断力や社会で活躍するために必要な知識や教養を身につけるための教育が施されます。 一方、ソフィーには、男性を喜ばせるための教養や家事のスキル、そして子供を育てるための知識など、家庭生活に必要な能力を身につけるための教育が重視されました。
ルソーは、女性の理性や知性は男性に比べて劣っているとし、 女性が社会進出を目指すことは自然の秩序に反すると考えました。 そのため、女性には高等教育は必要なく、むしろ有害であると主張しました。 ルソーの女性観は、当時のヨーロッパ社会に広く浸透していた考え方を反映したものでした。