## Ｊ・Ｓ・ミルの女性の解放と時間
ミルにおける「時間」概念の位置づけ
ジョン・スチュアート・ミルは、功利主義の伝統に立ちながら、歴史性や社会状況の変遷を重視した思想家として知られます。彼の思想において「時間」は、人間の思考や社会制度が変化しうるという可能性と密接に関係しています。ミルは、固定観念や偏見にと囚われず、経験と理性に基づいて絶えず改善を続けることが重要だと考えました。
「女性の解放」における時間の問題
ミルは主著『女性の解放』（1869年）において、当時の女性を取り巻く状況を、過去の慣習や偏見によって形作られた不正義の状態として批判しました。
ミルは、女性が男性に服従することを「自然な秩序」とみなす当時の一般的な見解に対し、それが歴史的に形成された社会的な偏見に過ぎないと主張します。
彼は、女性の能力が男性に劣るとされてきたのは、教育の機会が不平等に制限されてきたためであり、本来、女性にも男性と同等の理性と能力が備わっていると考えました。
ミルの主張の革新性と限界
ミルは、女性の解放を訴える際に、単に道徳的な観点からではなく、社会全体の幸福と進歩の観点から論じた点において先駆的でした。
彼は、女性の能力を社会に活かすことは、経済的な発展や文化的な創造性を促進することにつながり、結果として社会全体の利益に貢献すると主張しました。
しかし、ミルの主張は当時の社会状況において非常に先進的であったため、その実現には長い時間が必要でした。
ミルの主張は、女性の参政権運動などに大きな影響を与えましたが、女性の社会進出には、その後も多くの困難が伴いました。