魯迅の阿Q正伝の発想
魯迅自身の経験と観察
魯迅は、自身の人生経験や当時の中国社会の観察を通して、「阿Q正伝」の着想を得たとされています。彼は、当時の中国社会に蔓延する精神的な麻痺状態や、人々の欺瞞的な思考様式に強い問題意識を抱いていました。
辛亥革命の失敗と民衆の無知
「阿Q正伝」は、1911年の辛亥革命後の中国社会を舞台としています。辛亥革命は、清朝を倒し、共和制を樹立するという大きな変革をもたらしましたが、魯迅は、革命が民衆の意識改革までには至らなかったことに失望していました。阿Qは、革命の意義を理解しないまま、ただ時代の流れに翻弄される民衆の姿を象徴しています。
「国民性」への批判
魯迅は、「阿Q正伝」を通して、当時の中国人の精神的な弱さや問題点を鋭く批判しています。阿Qの自己欺瞞や精神勝利法は、当時の中国人に広く見られた逃避的な精神状態を表しています。魯迅は、このような「国民性」を克服しなければ、真の国家の進歩はあり得ないと考えていました。