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武器よさらばのパブロが抱く感情

武器よさらばのパブロが抱く感情

エルネスト・ヘミングウェイの名作「武器よさらば」に登場するパブロは、この物語における複雑な人物の一人です。彼の感情は多様で、時に予測不可能な行動を引き起こす重要な要素となっています。本稿では、パブロの感情の深層を探り、彼の行動や決断に与える影響について考察します。

矛盾する忠誠心

パブロの感情の核心には、矛盾する忠誠心が存在します。彼はスペイン内戦中の共和国側のゲリラ部隊のリーダーとして、反ファシストの理念に基づく行動を取る一方で、自身と自分の小隊の安全を最優先に考える傾向があります。この二律背反する忠誠心は、彼の行動と決断に著しい揺らぎを生み出しています。たとえば、主人公ロバート・ジョーダンとの関係において、パブロは当初協力的な態度を見せながらも、後に彼らの計画に対する疑念を抱き始めます。この変化は、パブロが抱く共和国への忠誠と、自己保存の本能の間の葛藤を反映しています。

恐怖と勇気

パブロの感情のもう一つの重要な側面は、恐怖と勇気の共存です。彼は過去の戦闘での経験から、死と破壊の恐怖を知っています。これは、特に物語の中で彼が示す一貫性のない行動、特に自己の安全と彼が率いる部隊の安全を確保しようとする際に顕著です。しかし、同時にパブロは非凡な勇気を持っており、リスクを冒す決断を下すこともあります。この勇気と恐怖のバランスが、彼の複雑な性格を形成していると言えます。

権力と支配への渇望

パブロの行動を動かすもう一つの強い動機は、権力と支配への渇望です。ゲリラ部隊のリーダーとしての彼の地位は、他のメンバーに対する支配を許し、彼らの尊敬を集めることを可能にします。しかし、この権力への渇望は、時に彼の判断を曇らせ、部隊の目的よりも個人的な野心を優先させる原因となることがあります。これは、パブロが時に自己中心的で、独裁的な行動を取ることにつながります。

複雑な愛情

最後に、パブロが抱く複雑な愛情にも注目すべきです。彼はパブラという女性に深い愛情を抱いており、彼女に対する彼の行動は、彼が他の面で示す冷酷さや計算高さとは対照的です。この愛情は、パブロの人間性の一面を浮き彫りにし、彼の行動においても重要な役割を果たしています。パブラに対する愛情は、彼の決断を左右することもあり、時には彼の戦闘的な本能と衝突することがあります。

パブロの感情は、「武器よさらば」の物語全体を通じて、彼の行動の根底にある動機として機能しています。彼の忠誠心、恐怖と勇気、権力への渇望、そして愛情といった感情は、彼のキャラクターを深く複雑なものにしており、物語において重要な役割を果たしています。

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