樋口一葉のたけくらべが扱う社会問題
貧困と階級社会
たけくらべでは、明治時代の下町を舞台に、貧富の差がもたらす子供たちの境遇の違いが鮮明に描かれています。主人公のお美津の家族は、かつては裕福な旗本でしたが、没落してからは貧しい暮らしを強いられています。一方、お美津の遊び仲間である信如は、裕福な商家の息子であり、何不自由ない生活を送っています。
このような貧富の差は、子供たちの服装や遊び、さらには将来の展望にまで影響を与えています。お美津は、自分の境遇を自覚するにつれて、信如との間には越えられない壁があることを痛感します。そして、信如への淡い恋心を抱きながらも、身分の違いから叶わぬ想いと諦めざるを得ません。
女性の社会進出の制限
当時の女性は、男性と比べて教育や職業の選択において著しく制限されていました。お美津もまた、芸者置屋で働く姉の姿を見て、自分の将来に不安を抱きます。芸者になることは、当時の女性にとって数少ない職業の選択肢の一つでしたが、それは同時に、男性の欲望の対象として生きることを意味していました。
お美津は、信如のように自由に学び、自分の将来を選択できる男性の姿に憧れを抱きます。しかし、女性であるというだけで、そうした自由が制限されている現実に打ちひしがれることになります。
教育の不平等
たけくらべでは、貧富の差が教育の機会の差に繋がっている様子も描かれています。信如は、裕福な家庭環境のおかげで寺子屋に通い、学問を学ぶことができます。一方、お美津は、経済的な事情から寺子屋に通うことができず、字も満足に読めません。
お美津は、信如から文字を教えてもらうことを通して、学ぶ喜びを知るようになります。しかし、それは同時に、自分が置かれている状況の不平等さを改めて突きつけられる経験でもありました。教育の機会が不平等であることは、子供たちの将来の可能性を大きく制限してしまう深刻な問題でした。