森鷗外の舞姫とアートとの関係
### 舞姫における西洋美術の描写
「舞姫」では、主人公の豊太郎がベルリンで鑑賞する西洋美術作品がいくつか具体的に描写されています。
* **ミケランジェロのモーセ像：**豊太郎は、モーセ像の威厳に圧倒されながらも、どこか冷淡さを感じ取ります。これは、合理性を重視する当時のドイツ社会で豊太郎が感じていた違和感を象徴しているとも解釈されています。
* **ラファエロの絵画：**豊太郎は、ラファエロの絵画に理想的な美しさを見出し、心を惹かれます。しかし同時に、それが現実離れしたものであることも感じ取っています。
* **ギリシャ彫刻：**豊太郎は、ギリシャ彫刻の均整のとれた美しさに感動し、それが日本美術の美意識とは異なるものであることを認識します。
### 西洋美術と豊太郎の心情の変化
豊太郎は、これらの西洋美術に触れることを通じて、自身の美的感覚が大きく揺さぶられていきます。
* **西洋美術への傾倒：**当初、東洋と西洋の文化の差異に戸惑っていた豊太郎でしたが、次第に西洋美術の持つ力強さや美しさに魅了されていきます。
* **エリスとの出会い：**西洋美術への傾倒と並行して、豊太郎はエリスという踊り子と恋に落ちます。エリスは、豊太郎にとって西洋の美の象徴であり、西洋美術への傾倒はエリスへの恋情とも深く結びついていました。
* **内面の葛藤：**しかし、豊太郎はエリスとの恋を貫くことはできず、最終的には彼女を捨てて日本へ帰国することを選びます。この決断には、西洋美術への傾倒と、日本社会における自身の立場との間で揺れ動く豊太郎の苦悩が反映されていると解釈できます。
### まとめ
「舞姫」における西洋美術の描写は、単なる舞台設定としてではなく、豊太郎の心情の変化や内面の葛藤を象徴するものとして重要な役割を果たしています。豊太郎が西洋美術を通して何を見出し、どのように変化していくのかを読み解くことは、「舞姫」という作品をより深く理解することに繋がると言えるでしょう。