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村上春樹のノルウェイの森が扱う社会問題

## 村上春樹のノルウェイの森が扱う社会問題

喪失と喪の過程

「ノルウェイの森」は、主人公ワタナベが、恋人である直子の自殺、そして親友キズキの自殺という、ふたつの大きな喪失を経験し、その痛みと向き合いながら成長していく物語です。
村上は、喪失による心の傷や、そこから立ち直ろうともがく姿を、繊細な筆致で描いています。ワタナベは、直子に対して抱く愛情と罪悪感、キズキを失ったことへの虚無感の間で揺れ動き、苦悩します。

周囲の人々もまた、それぞれの喪失と向き合い、独自の道を歩んでいます。直子の親友である緑の存在は、ワタナベが喪の過程から再生していくための光となりますが、彼女自身もまた、家族の死という喪失を経験し、心の傷を抱えています。

コミュニケーションの断絶と孤独

登場人物たちは、それぞれが心に深い孤独を抱え、真の意味でのコミュニケーションを取ることができません。ワタナベは、直子と心を通わせようとしますが、彼女の心の闇は深く、真に理解することは叶いません。
緑は明るく社交的な性格に見えますが、内面には孤独感を抱えており、ワタナベに心を開こうと葛藤します。

70年代の学生運動の退潮後、閉塞感漂う社会の中で、若者たちは理想と現実のギャップに苦しみ、孤独を深めていきます。ワタナベが過ごす大学寮も、閉鎖的な空間として描かれ、そこでの人間関係は表面的で、真の繋がりを感じさせるものではありません。

セクシュアリティとアイデンティティ

「ノルウェイの森」は、性をテーマに、思春期の少年少女の揺れ動く心情を描写しています。ワタナベは、直子への純粋な愛情と、肉体的な欲求との間で葛藤します。

一方、緑は、奔放な行動でワタナベを翻弄しますが、そこには、自分自身を解放し、本当の自分を模索しようとする姿が見て取れます。

当時の日本の社会では、性に対しては抑圧的な風潮があり、若者たちは、自らのセクシュアリティと向き合い、アイデンティティを確立することに困難を抱えていました。小説は、そうした時代の空気を背景に、若者たちの性に対する戸惑いや葛藤をリアルに描き出しています。

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