文学作品が描く1770年代
1770年代は、世界史において重要な時代であり、多くの文学作品がこの時代の社会的、政治的、および文化的な背景を反映しています。この時期は特にアメリカ独立戦争の始まりと重なり、ヨーロッパでは啓蒙時代の影響が色濃く、文学の世界でも新たな流れが生まれていました。ここでは、この時代を象徴する二つの文学作品、「コモン・センス」（トーマス・ペイン著、1776年）と「男は皆兄弟である」（オラウダ・エクイアノ著、1789年に公表されたが、1770年代の経験に基づいている）を通して、1770年代がどのような時代だったのかを探ります。
### コモン・センス：アメリカ独立戦争の背後にある思想
トーマス・ペインの「コモン・センス」は、アメリカ独立戦争の前夜に出版された小冊子であり、アメリカ合衆国の建国理念と独立への道を照らした政治的文書です。この作品は、イギリスからの独立の正当性を弁護し、アメリカ人に自由と独立の意義を訴えかけました。ペインは、啓蒙思想に基づいた明快な論理と熱烈な語り口で、王政という古い政治体制を批判し、民主主義に基づく新しい国家の構想を提案しました。これにより、1770年代のアメリカは、政治的抑圧からの解放と自己決定の重要性を追求する時代であったことが示されます。
### 男は皆兄弟である：奴隷制度との闘い
一方、オラウダ・エクイアノの自伝的作品「男は皆兄弟である」は、彼自身の奴隷としての経験と自由を勝ち取るまでの道のりを描いています。この作品は、1770年代の大西洋奴隷貿易とその残酷さを克明に記録し、奴隷制度に対する批判と廃止運動の一環として読み取ることができます。エクイアノは、自身の体験を通して、人間の尊厳と平等、そして自由への渇望を強調し、読者に奴隷制度の非人道性を訴えかけました。この作品は、1770年代が奴隷制度と闘い、人権の拡大を求めた時代であったことを物語っています。
これらの文学作品を通じて、1770年代がどのような時代であったかを考察すると、この時期は政治的、社会的変革の渦中にあり、個人の自由と権利を求める動きが活発であったことがわかります。トーマス・ペインの「コモン・センス」は、アメリカ独立戦争を理念的に支えた作品として、オラウダ・エクイアノの「男は皆兄弟である」は、奴隷制度に対する強力な批判として、それぞれ1770年代の重要な側面を浮き彫りにしています。