大人のためのシュミット「憲法論」
国家と憲法の本質を問う古典的名著
カール・シュミットの「憲法論」は、1928年に刊行された、憲法理論における古典的名著です。現代社会においてもなおその影響力は大きく、法学者のみならず政治学者、歴史学者など幅広い分野の研究者から読み継がれています。そして、現代社会を生きる私たちにとっても、この著作は国家や憲法の本質を考える上で多くの示唆を与えてくれる重要な書物と言えるでしょう。
ワイマール憲法の時代背景とシュミットの洞察
「憲法論」が執筆された時代背景は、第一次世界大戦後のドイツ、ワイマール共和国期です。この時代は、民主主義体制が新たに導入されたものの、政治的・経済的な不安定さが社会を覆い、左右両極端の政治勢力が台頭するなど、混乱と動揺の時代でした。シュミットはこのような時代状況の中で、ヴァイマル憲法の抱える問題点や限界を鋭く指摘し、国家と憲法の本質について深く考察しました。
憲法の「政治的なもの」としての側面
シュミットは「憲法論」の中で、憲法を単なる法規範の集合体として捉えるのではなく、「政治的なもの」として捉えることの重要性を強調しています。彼は、憲法制定権力は政治的な意思決定に基づいており、憲法は国家の基本的な政治的方向性を決定するものであると主張しました。つまり、憲法とは、単なる法律の条文ではなく、国家のアイデンティティや政治体制の根幹を成す、より根源的な「政治的な決断」を体現したものであると捉えられます。
「主権者」概念の再定義と現代社会への示唆
シュミットは、国家における「主権者」とは、「例外状態」を決定する者であると定義しました。これは、平時における法秩序を超越した緊急事態において、最終的な決断を下す権限を持つ者を指します。この「例外状態」の概念は、現代社会においても、テロリズムや大規模災害など、既存の法制度では対応しきれない事態が発生した場合に、国家がどのように対応すべきかという問題を考える上で重要な視点を与えてくれます。
現代における「憲法論」を読む意義
現代社会は、グローバル化や情報化の進展、新たな安全保障上の脅威など、ワイマール共和国期とは異なる様々な課題に直面しています。しかし、国家や憲法の本質を問うシュミットの洞察は、現代社会においても色褪せることなく、私たちに重要な問いを投げかけています。国家とは何か、憲法とは何か、そして主権とは何か。これらの問いに対する答えを探求することは、現代社会を理解し、より良い未来を創造していく上で不可欠と言えるでしょう。
「憲法論」は難解な部分も多い著作ですが、現代社会を深く理解するために、そして私たち自身の政治的な立場を確立するために、ぜひ一度手に取って読んでみることをお勧めします。
Amazonで憲法論 の本を見る
読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。