大人のためのシェイクスピア「二人のいとこの貴公子」
シェイクスピアの「異色作」に触れることで見えてくるもの
シェイクスピアの「二人のいとこの貴公子」は、四大悲劇や喜劇といったメジャーな作品群に比べて、あまり上演される機会も多くなく、一般的には知名度の低い作品といえるでしょう。しかし、だからこそ、この作品には他のシェイクスピア作品とは異なる魅力が秘められています。
この作品は、ジョン・フレッチャーとの合作と言われています。シェイクスピア単独の作品とは異なる作風や構成を感じ取ることができるため、シェイクスピア劇の多様性、そして彼がいかに他の劇作家と影響し合いながら創作活動を行っていたのかを知る手がかりとなるでしょう。
複雑に絡み合うロマンスと嫉妬、人間の深淵をのぞき込む
「二人のいとこの貴公子」は、タイトルからもわかるように、二人のいとこである貴公子、パラモンとアーサイトを中心に物語が展開されます。彼らは捕虜として幽閉された先で、同じ女性エミーリアに恋をしてしまい、友情と愛情の間で葛藤することになります。
この三角関係は、単なる恋愛劇の枠を超え、人間の持つ嫉妬心や所有欲、そしてそれらが引き起こす悲劇を深く描き出しています。特に、捕虜としての不自由な状況下で、限られた世界の中で芽生えた激しい感情は、観る者に人間の心の脆さ、そして抗えない運命の残酷さを突きつけます。
また、エミーリアの存在も注目すべき点です。彼女は、二人の貴公子の憧れの対象でありながら、自身もまた、囚われの身であるという境遇にあります。彼女自身の感情や葛藤も丁寧に描かれており、男性中心の物語になりがちなシェイクスピア作品の中では、比較的女性の主体性を強く感じられる作品と言えるでしょう。
宮廷社会と民衆の生活、対照的な世界が織りなすドラマ
「二人のいとこの貴公子」では、貴公子たちの華やかな世界と、彼らを支える民衆の生活が対照的に描かれています。
宮廷社会における権力闘争や恋愛模様は、時に残酷で、時に滑稽です。一方で、民衆の生活は、貧しくとも素朴で、そこには人間的な温かさや繋がりが見られます。
この二つの世界の対比は、当時の社会構造を反映しているだけでなく、人間の普遍的な欲望や感情を浮き彫りにしています。
「騎士道」というテーマを多角的に考察する
中世ヨーロッパの騎士道物語をベースにしたこの作品では、「騎士道」という概念が重要なテーマとして扱われています。
パラモンとアーサイトは、どちらも勇敢で高潔な騎士ですが、エミーリアへの愛をめぐる争いの中で、彼らの騎士道精神は試練にさらされます。
作品を通して、「真の騎士道とは何か」ということを考えさせられるでしょう。それは、単なる武勇や礼儀作法ではなく、愛や友情、そして自己犠牲といった、より深い人間性を内包したものであることが示唆されています。
隠れた名台詞の数々、シェイクスピアならではの言葉の魔法
「二人のいとこの貴公子」は、四大悲劇のような有名な作品と比べると、あまり知られていない作品かもしれませんが、シェイクスピアならではの美しい言葉遣いや、登場人物たちの心情を鋭く描写した名台詞が数多く散りばめられています。
これらの台詞は、現代の私たちにも通じる普遍的なテーマを扱っており、人生の喜びや悲しみ、愛や憎しみといった、様々な感情を呼び起こしてくれるでしょう。
あまり知られていない作品だからこそ、じっくりと台詞を読み解き、シェイクスピアの言葉の魔法に触れてみることで、新たな発見があるかもしれません。
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読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。