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夏目漱石のこころと時間

## 夏目漱石のこころと時間

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時間の流れ

「こころ」は、大きく分けて「先生と私」「両親と私」「先生と遺書」の三部構成と、それぞれの語り手である「私」の視点によって時間の流れが変化する特徴を持つ。

第一部「先生と私」では、語り手である「私」と「先生」の出会いと交流が、現在の時間軸で語られる。物語は「私」の回想形式で進行し、過去の出来事である「先生」との出会いや交流が、現在の「私」の視点から語られる。

第二部「両親と私」では、語り手である「私」の視点が過去へと移り、学生時代の「私」と両親との関係、特に父親との確執と和解が描かれる。この部分は、「私」の個人的な過去を掘り下げることで、「先生」の過去と対比する役割を持つ。

第三部「先生と遺書」では、「先生」の視点から「先生」自身の過去が語られる。この部分は「先生」の遺書という形で、「先生」自身の言葉で語られ、過去の出来事が「先生」自身の内面を通して描かれる。

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時間の歪み

「こころ」では、時間の流れが必ずしも一直線ではなく、過去と現在が交錯することで時間の歪みが生じている点が特徴的である。

例えば、「先生」は過去に囚われた存在として描かれ、「先生」の回想を通して語られる明治という時代は、すでに過ぎ去った過去として「先生」の心に暗い影を落としている。

一方、「私」は「先生」の過去を知ることで、自らの現在と向き合い、未来へと歩みを進めようとする存在として描かれている。

このように、「こころ」では、過去と現在が複雑に交錯することで、時間の流れが歪み、登場人物たちの心の揺れ動きが浮き彫りになる。

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