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夏目漱石の『こころ』と言語

## 夏目漱石の『こころ』と言語

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一人称小説と「こころ」の言語

『こころ』は、「先生」と「私」という二人の語り手を中心に展開される一人称小説です。それぞれのパートで異なる文体が用いられ、語り手の内面や物語全体の雰囲気を形作っています。

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「私」の語りと言語

「私」の語りには、若者の未熟さや世間知らずな部分が反映されています。文体は比較的平易で、口語的な表現も多く見られます。特に、先生に対する疑問や不信感を抱きながらも、その心情をうまく表現できないもどかしさが、「私」の未熟さを強調しています。

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「先生」の語りと言語

「先生」の語りには、過去の罪悪感や孤独感、そして「私」に対する複雑な感情が表現されています。文体は「私」のパートに比べて硬質で、古典的な表現や難解な単語も用いられます。特に、「先生」の遺書に見られるような、自己の内面を克明に分析するような独白調の文体は、彼の内面の苦悩を浮き彫りにしています。

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沈黙と言葉

『こころ』では、登場人物たちの「沈黙」も重要な意味を持ちます。特に、「先生」は「私」に対して、自身の過去や「お嬢さん」との関係について多くを語りません。この沈黙は、「先生」の罪悪感や苦悩の深さを表すと同時に、「私」との距離感を象徴しています。

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時代背景と言語

『こころ』は、明治時代末期から大正時代初期にかけての日本を舞台としています。当時の社会は、西洋化や近代化の波に翻弄され、人々の価値観も大きく揺らいでいました。作中の言語表現には、このような時代背景が色濃く反映されており、伝統的な価値観と西洋的な価値観の対立、旧世代と新世代の断絶などが描かれています。

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