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三島由紀夫の金閣寺の思考の枠組み

## 三島由紀夫の金閣寺の思考の枠組み

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美と醜

「金閣寺」は、美と醜という対照的な概念を軸に物語が展開されます。主人公の溝口は、吃音というコンプレックスを抱え、周囲との間に壁を感じながら生きています。彼にとって、金閣は絶対的な美の象徴であり、憧憬と同時に、自身の醜さを突きつける存在として意識されます。

溝口の美意識は、金閣の美しさに圧倒されることで育まれ、同時に歪んでいきます。現実の女性や自然の美しさよりも、金閣という人工物、それも過去に存在した理想化された美に固執していく様子が描かれます。

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現実と虚構

溝口は、現実世界での人間関係や社会生活にうまく適応できず、金閣という虚構の世界に逃避しようとします。金閣は彼にとって、現実の醜さや苦悩から逃れることのできる、唯一の安息の地でした。

小説では、戦後の混乱期という時代背景も相まって、現実世界の不安定さと金閣の不変の美しさとの対比が強調されます。溝口は金閣の美しさに執着することで、現実逃避を繰り返していくことになります。

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破壊による創造

溝口の中で、金閣の美しさは絶対的なものとして君臨し続けます。しかし、その美しさは同時に、彼自身の存在を脅かすものでもありました。金閣の美しさに打ち勝ち、自己を確立するためには、金閣を破壊するしかないという衝動に駆り立てられていきます。

溝口にとって、金閣の破壊は単なる破壊行為ではなく、自身の内面世界における創造行為でもありました。金閣を破壊することで、その美しさから解放され、新たな自己を創造しようとします。

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禅の思想

「金閣寺」には、禅の思想が重要なモチーフとして登場します。特に、老僧である住職の言葉や行動を通して、生と死、美と醜、現実と虚構といった対立概念を超越した、禅的な世界観が提示されます。

溝口は、禅の思想に触れることで、金閣に対する執着心や自己の醜さに対する苦悩から解放される可能性を見出します。しかし、最終的には、禅の境地に達することができず、自身の内面に渦巻く破壊衝動に屈してしまうことになります。

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