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三島由紀夫の金閣寺が関係する学問

三島由紀夫の金閣寺が関係する学問

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美学

「金閣寺」は、美に対する執拗なまでの追求と、それがもたらす破壊的な側面を描いた作品として、美学の観点から考察することができます。主人公の溝口は、金閣の圧倒的な美に魅せられながらも、同時にその美によって自己の存在が脅かされていると感じます。溝口にとって金閣の美は、憧憬と同時に、乗り越えなければならない障壁として存在しているのです。

作中では、金閣の美は様々な角度から描写されます。太陽の光にきらめく様、池に映る姿、夜の闇に浮かび上がる姿など、時間や天候によって変化する金閣の美しさは、読者に多様な美の形態を意識させます。また、溝口の内的世界を通して語られる金閣の美は、客観的な美の描写を超えて、主観的な美の解釈、美の受け取り方の問題を提起すると言えるでしょう。

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心理学

「金閣寺」は、吃音やコンプレックスを抱えた青年、溝口の心理を通して、人間の深層心理に迫る作品でもあります。溝口は、自身の内面に抱える劣等感や疎外感を金閣の美と対比させることで、自己の存在を相対化しようと試みます。

金閣への執着は、溝口の抱える深層心理の表れとして解釈することができます。現実世界に馴染めない溝口にとって、金閣は唯一無二の絶対的な美を体現する存在であり、心の拠り所となっていました。しかし同時に、金閣の美は溝口自身の内面の醜悪さを際立たせるものでもあり、それが最終的に破壊衝動へと繋がっていく様子は、人間の心理の複雑さを浮き彫りにしています。

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仏教思想

「金閣寺」は、仏教寺院である金閣を舞台に、生と死、美と醜、現実と虚構といった対比を描きながら、仏教思想を背景としたテーマを扱っています。作中には、禅の思想や仏教用語が散りばめられており、溝口の精神的な葛藤を理解する上で重要な鍵となります。

例えば、溝口が師匠の言葉から「金閣を焼き払え」という啓示を受けたと解釈する場面は、仏教における「執着からの解放」という思想と関連付けられます。また、金閣炎上というショッキングな結末は、仏教の根幹をなす「諸行無常」の思想を象徴的に表しているとも言えるでしょう。

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