ヴォルテールの哲学辞典の構成
ヴォルテールの哲学辞典の構成
「哲学辞典」はアルファベット順に配列された、一見すると辞書的な体裁を持つ書物です。しかし、実際には体系的な哲学書というよりは、ヴォルテール自身の思想や批判精神を反映した、多岐にわたるテーマを扱ったエッセイ集と捉えることができます。
各項目は、短いものから長いものまで様々です。短い項目では、用語の定義や簡単な説明に終始するものも見られます。一方、長い項目では、政治、宗教、道徳、歴史、文学など、ヴォルテールの関心に基づいた幅広いテーマが論じられています。
特徴的なのは、一見すると客観的な記述に見せかけながら、風刺や皮肉を交え、当時の社会や権力者、宗教などを痛烈に批判している点です。
また、項目同士の関連性は希薄で、相互参照などもほとんどありません。そのため、読者は好きな項目から自由に読むことができます。これは、体系的な知識の伝達よりも、読者自身の思考を促すことを目的としていたヴォルテールの意図を反映していると考えられます。