ヴォルテールの哲学辞典とアートとの関係
芸術と理性
ヴォルテールの『哲学辞典』は、芸術に対する体系的な考察を含むものではありませんが、そこかしこに散りばめられた記述から、彼の芸術観を垣間見ることができます。 彼が重視したのは、理性を基盤とした芸術です。 彼は、人間の理性こそが世界を理解し、表現するための最高の手段だと考えていました。
たとえば、「美」のエントリーでは、美は客観的なものではなく、時代や文化、個人の主観によって変化するものだと述べています。 しかし、同時に、真の美は人間の理性に訴えかける普遍的な要素を持っているともしています。
古典主義と啓蒙主義
ヴォルテールは古典主義の伝統を重んじ、古代ギリシャ・ローマの芸術を理想としていました。 彼は、古典作品に見られる調和、均衡、簡潔さこそが、芸術が目指すべき姿だと考えていたのです。
一方で、彼は啓蒙主義の思想家として、芸術の社会的役割についても言及しています。 彼は、芸術は人々の心を啓蒙し、社会をより良い方向へと導くための力を持つと考えていました。 そのため、彼は風刺やユーモアを効果的に用い、当時の社会や宗教の矛盾を鋭く批判しました。
演劇の重要性
ヴォルテール自身も劇作家として活躍し、演劇は彼の思想を伝えるための重要な手段でした。 彼は、演劇は人々に直接訴えかけ、感情を揺り動かす力を持つと考えていました。
彼の作品は、古典的な形式を踏まえながらも、社会風刺や哲学的なテーマを織り交ぜた革新的なものでした。 彼の代表作『ザイール』や『カンディード』などに見られるように、彼は演劇を通して、宗教的寛容や理性に基づいた社会の実現を訴えかけました。