ヴォルテールの哲学書簡の思索

ヴォルテールの『哲学書簡』は、イギリス滞在中に得た経験を元に、フランスの旧体制やカトリック教会に対する批判を展開した書簡集です。イギリス社会の自由と寛容に触れたヴォルテールは、フランスの現状に強い疑問を抱き、その改革を訴えました。

特に宗教に関しては、イギリスにおける多様な宗派の共存を目の当たりにし、フランスにおけるカトリック教会の一元的な支配体制を批判しています。哲学書簡では、クエーカー教徒の質素で敬虔な信仰や、イギリス国教会の合理的で寛容な姿勢を高く評価し、フランスにおける宗教的迫害や不寛容を非難しました。

ヴォルテールは、イギリスの立憲君主制と議会政治にも強い関心を示しました。当時のフランスは絶対王政の下、国王の権力が絶対であり、国民には政治参加の権利が認められていませんでした。

一方、イギリスでは、議会が立法権を持ち、国民は選挙を通じて政治に参加する権利を有していました。ヴォルテールは、イギリスにおける権力分立の仕組みや言論の自由、出版の自由を高く評価し、フランスの旧体制における政治的抑圧を批判しました。

ヴォルテールは、イギリスの経済的な繁栄にも注目しました。当時のフランスは、重商主義政策の下で、国家が経済活動を厳しく統制していました。

一方、イギリスでは、自由貿易政策がとられ、商業活動が活発に行われていました。ヴォルテールは、イギリスにおける商業の自由や商人の社会的地位の高さに感銘を受け、フランスの旧体制における経済的な閉鎖性を批判しました。