## ヴォルテールの哲学書簡の光と影
イギリス社会と政治体制への称賛
ヴォルテールは、当時のフランスと比較して、イギリスの社会と政治体制を高く評価していました。『哲学書簡』において、彼はイギリスの宗教的寛容、言論の自由、そして議会政治を賞賛しています。
特に、第6~8手紙では、イギリスの宗教的寛容について詳しく論じられています。フランスではカトリック教会が絶対的な権力を持ち、異端に対する迫害が行われていましたが、イギリスでは異なる宗派が共存し、互いに寛容な態度で接していました。ヴォルテールは、このような宗教的寛容がイギリスの社会の安定と発展に大きく貢献していると評価しています。
また、第17~19手紙では、イギリスの議会政治を高く評価しています。当時のフランスでは、絶対王政の下で国王が絶大な権力を握っていましたが、イギリスでは議会が国王の権力を制限し、国民の権利を保護していました。ヴォルテールは、このような議会政治がイギリスの自由と繁栄の基盤となっていると論じています。
フランスの旧体制への批判
ヴォルテールは、『哲学書簡』の中で、イギリス社会と政治体制を称賛する一方で、フランスの旧体制に対する痛烈な批判を展開しています。彼は、フランスの絶対王政、カトリック教会の権力、そして貴族社会の特権を強く批判しました。
特に、宗教的な不寛容と迷信に対する批判は、『哲学書簡』全体を通じて重要なテーマとなっています。ヴォルテールは、理性と経験に基づかない宗教的な dogma や、盲目的な信仰を強く非難し、宗教が政治や社会生活に過度に介入することを批判しました。
また、フランスの貴族社会の特権を批判し、能力や功績ではなく、生まれによって社会的地位が決定される不平等な社会構造を問題視しました。彼は、個人の自由と平等を重視する立場から、フランス社会の旧弊な制度や慣習を鋭く批判しています。
これらの光と影は、『哲学書簡』が単なるイギリス礼賛ではなく、フランス社会の改革を強く望むヴォルテールの思想が反映された作品であることを示しています。