## ヴォルテールのミクロメガスの話法
ミクロメガスとサテュロスという存在
物語は、シリウス出身の巨人ミクロメガスと、土星の住民であるサテュロスという対照的な二人の登場人物を中心に展開されます。ミクロメガスは身長が約4万メートル、サテュロスは約1,500メートルという、地球人から見ればどちらも巨人のような存在です。
この極端な体格差は、そのまま異なる視点、価値観、思考様式を象徴しています。ミクロメガスは博識で冷静沈着、理性的な思考の持ち主として描かれます。一方のサテュロスは、比較的に感情的で、自己中心的、偏見にとらわれやすい面が見られます。
風刺の対象
ヴォルテールは、ミクロメガスとサテュロスの対話を通して、当時のフランス社会、ひいては人間の愚かさや矛盾を風刺しています。
例えば、地球人との出会いの場面では、ミクロメガスとサテュロスは地球人を観察し、その小ささ、戦争や宗教対立などの愚行に驚愕します。これは、当時のヨーロッパ社会における宗教や哲学の対立、戦争の頻発などを批判していると解釈できます。
また、ミクロメガスが地球人に比べて非常に優れた知性を持つにも関わらず、宇宙の広大さや創造主の存在など、究極的な謎については答えを見出せないという描写も、人間の認識の限界に対する風刺を含んでいます。
異化効果
ミクロメガスとサテュロスという、地球人から見れば異質な存在の視点を通して、読者は自分たちの社会や価値観を客観的に見つ直すことを促されます。
例えば、ミクロメガスが地球人の小ささを指摘することで、読者は自分たちがいかにちっぽけな存在であるかを意識させられます。また、ミクロメガスが地球人の価値観や習慣に疑問を呈することで、読者はそれまで当然と思っていたことに対する新たな視点を得ることになります。
このように、ヴォルテールは異化効果を用いることで、読者に自省を促し、固定観念にとらわれない自由な思考を促しています。