ヴォルテールのカンディードの秘密
カンディードにおける楽観主義の風刺
『カンディード』は、ヴォルテールが当時の支配的な哲学思想であったライプニッツの楽観主義を痛烈に風刺した作品です。ライプニッツは、「私たちの世界は、あらゆる可能な世界の中で最善の世界である」と説きましたが、ヴォルテールは、戦争、宗教的迫害、自然災害、人間の残虐行為など、世界に蔓延する悪と苦しみを描写することで、この考え方に真っ向から反論しました。
登場人物たちの遍歴
物語は、主人公のカンディードが、楽観主義の教えを信奉する家庭教師パングロスのもとで、楽園のような城で暮らす場面から始まります。しかし、カンディードは恋人のキュネゴンドへの想いをつのらせたことで城を追放され、そこから過酷な運命に翻弄されることになります。
カンディードは、宗教戦争、地震、奴隷制、インカ帝国の残虐性など、様々な苦難を経験し、その過程でパングロスや他の登場人物たちと再会と別れを繰り返します。こうした旅を通して、カンディードは当初盲信していた楽観主義に疑問を抱き始めます。
エルドラドの存在
カンディードは、旅の途中で理想郷エルドラドに辿り着きます。エルドラドは、黄金や宝石が豊富に存在し、人々が知性と寛容の精神を持って共存する、まさに楽園のような場所です。しかし、ヴォルテールは、カンディードがエルドラドに留まることを選ばず、再び現実の世界へと戻っていく様子を描くことで、完全な幸福が実現不可能であることを示唆しています。
「自分の庭を耕せ」
物語の終盤、カンディードは、かつて出会った老人が「自分の庭を耕せ」という言葉を繰り返し口にしていたことを思い出します。この言葉は、抽象的な哲学論争に明け暮れるのではなく、目の前の現実的な課題に取り組むことの大切さを象徴しています。最終的に、カンディードは、キュネゴンドと再会し、質素ながらも自給自足の生活を送ることを決意します。