ヴォルテールのカンディードの発想
ヴォルテールの思想的背景
ヴォルテールは、18世紀フランス啓蒙主義を代表する思想家の一人であり、理性と経験に基づいた思考を重視しました。彼は、当時の社会に蔓延していた迷信、宗教的狂信、不合理な権力構造などを批判し、人間の自由と幸福を追求する社会の実現を目指しました。
彼の思想は、ジョン・ロックなどのイギリス経験主義哲学や、ピエール・ベールなどの合理主義思想の影響を受けています。また、ヴォルテール自身も歴史や科学など幅広い分野に関心を持ち、その知識を作品に反映させています。
「最善説」への批判
「カンディード」は、ドイツの哲学者ライプニッツが提唱した「最善説」に対する痛烈な風刺文学として知られています。「最善説」とは、「この世界は、考えうる限り最も良い世界である」とする考え方です。
ヴォルテールは、当時の社会における戦争、貧困、自然災害などの悲惨な現実を目の当たりにし、「最善説」の楽観的な世界観に強い疑問を抱いていました。「カンディード」では、主人公カンディードが、楽観主義の師パン glossaire(パングロス)博士とともに、世界各地を旅する中で、様々な苦難に遭遇します。
経験を通して現実を直視する
「カンディード」は、単に「最善説」を否定する作品ではありません。ヴォルテールは、作中で様々な思想や哲学を紹介しながらも、それらを絶対的な真理として提示することはありません。
むしろ、彼は主人公カンディードの経験を通して、読者に自分自身の目で世界を観察し、思考することを促しています。「カンディード」の結末で提示される「自分の庭を耕せ」という言葉は、現実社会と向き合い、具体的な行動を起こすことの重要性を象徴しています。