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ヴォルテールのカンディードに影響を与えた本

ヴォルテールのカンディードに影響を与えた本

ライプニッツの「形而上学叙説」

ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツの「形而上学叙説」は、ヴォルテールの風刺小説「カンディード」の哲学的基盤を築いた重要な著作です。この作品の中で、ライプニッツは、我々が住む世界は、あらゆる可能な世界の中で最良のものであるという「最善説」を展開しています。彼は、神は全知全能であり、完全に善であるため、欠陥のある世界を創造することはあり得ないと論じています。

ヴォルテールは、パングロッス先生という楽観的な人物像を通して、ライプニッツの「最善説」を風刺しました。パングロッス先生は、「カンディード」の主人公カンディードの家庭教師であり、あらゆる出来事には必ず理由があり、すべては最終的には最善の結果に繋がると説きます。地震や疫病、人間の残虐行為といった悲惨な出来事が起きても、パングロッス先生は決して楽観的な見方を崩さず、それらを「最善の世界における必然的な出来事」として正当化しようとします。

ヴォルテールは、こうしたパングロッス先生の言動を通して、ライプニッツの「最善説」の不合理さを露呈しようとしました。彼は、「カンディード」の中で、戦争、貧困、自然災害といった現実世界の苦しみを克明に描き、楽観的な世界観では説明できない現実の残酷さを浮き彫りにしました。

「形而上学叙説」の影響は、「カンディード」のテーマ設定や登場人物の造形だけでなく、物語の展開にも色濃く反映されています。例えば、カンディードが経験する数々の苦難は、ライプニッツの哲学に対するヴォルテールの批判的な視点を象徴的に表しています。

「カンディード」は、単なる哲学的な風刺小説ではなく、当時の社会や思想に対するヴォルテールの鋭い批判が込められた作品です。彼は、「形而上学叙説」を風刺の対象とすることで、盲目的な楽観主義や受動的な諦観を戒め、人間が自らの理性と行動によってより良い世界を築き上げていくことの重要性を訴えました。

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