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ヴォルテールのカンディードと言語

ヴォルテールのカンディードと言語

風刺の道具としての言語

『カンディード』では、ヴォルテールは登場人物の言葉遣いや、物語展開における言葉の使い方を通じて、当時の社会や思想を鋭く風刺しています。特に、楽観主義や宗教、戦争、貴族社会などがその対象となっています。

パングロスとカンディードの対比的な言語

「この世は可能な限り最善の世界である」というライプニッツの楽観主義を体現するパングロスは、どんな悲惨な状況に陥っても、自身の主張を正当化する屁理屈を並べ立てます。彼の言葉は、複雑な修辞や哲学用語を駆使しているように見えて、実際には中身がなく、現実を直視しようとしない欺瞞に満ちています。

一方、物語の主人公であるカンディードは、当初はパングロスの教えを盲信していますが、様々な苦難を経験する中で、徐々にその教えに疑問を抱くようになります。彼の言葉は、物語が進むにつれて、素朴で率直なものへと変化していきます。

多様な言語と登場人物

『カンディード』には、フランス語だけでなく、スペイン語、ポルトガル語、英語など、様々な言語が登場します。これは、物語の舞台がヨーロッパ各地や新大陸にまで及ぶことを反映しているだけでなく、当時のヨーロッパ社会における多言語環境や文化交流を暗示しています。

また、登場人物の社会的地位や出身地、性格によって、言葉遣いが異なっていることも特徴です。例えば、貴族階級の人々は洗練されたフランス語を話す一方、庶民は方言や俗語を交えた話し方をします。

簡潔で明快な文体

ヴォルテールは、『カンディード』において、簡潔で明快な文体を用いています。これは、当時のフランス文学界で主流であった、装飾的で難解な文体とは対照的なものでした。ヴォルテールは、読者層を貴族階級だけでなく、一般市民にまで広げたいと考えており、そのためには、誰にでも理解しやすい平易な言葉で物語を書く必要があると考えたのです。

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