ヴォルテールのカンディードが扱う社会問題
貴族制度の不条理
カンディードは、主人公カンディードの出自が「男爵の妹の息子で、まぎれもない甥御さん」という、貴族社会における血統と身分を強く意識させる設定から始まります。しかし、作中では、カンディードが生まれながらもその特権を享受できない様子が描かれ、貴族制度の矛盾が浮き彫りになっていきます。
例えば、カンディードは、愛するキュネゴンドとの身分違いの恋によって城から追放されたり、軍隊に無理やり入隊させられたりするなど、理不尽な扱いを受けます。また、旅の途中で出会う人々の中にも、貴族の横暴によって不幸に陥れられた人々が数多く登場します。
これらの描写を通して、ヴォルテールは、生まれながらの身分によって個人の価値が決められる貴族社会の不条理さを痛烈に批判しています。
宗教的偽善の告発
カンディードには、楽観主義の教えを説くパン gloss教授や、異端審問官など、様々な宗教関係者が登場します。しかし、彼らの言動は、必ずしも慈悲や道徳にかなったものではなく、むしろ私利私欲や権力欲にまみれていることが少なくありません。
例えば、パン gloss教授は、地震の発生を「万事最善」と無理やりに解釈し、現実から目を背けようとします。また、異端審問官は、自らの権力を誇示するために、無実の人々を拷問にかけたり、処刑したりします。
これらの描写を通して、ヴォルテールは、当時の宗教界に蔓延していた偽善や腐敗を鋭く批判しています。特に、理性や経験に基づかない盲目的な信仰や、宗教を隠れ蓑にした権力者の横暴に対して、強い嫌悪感を示しています。
戦争の悲惨さと不条理
カンディードは、ブルガリア軍とアバリア軍との戦争や、オランダとフランスとの戦争など、様々な戦争の場面に遭遇します。そこで、彼は、戦争がもたらす悲惨さと不条理さをまざまざと見せつけられます。
例えば、カンディードは、戦場で無残に殺された人々の死体や、飢えや病気で苦しむ人々の姿に衝撃を受けます。また、戦争が、権力者たちの野望や私利私欲のために引き起こされ、一般市民は、その犠牲を強いられている現実を目の当たりにします。
これらの描写を通して、ヴォルテールは、戦争の愚かさと、それが人間にもたらす苦しみを訴えています。特に、国家や民族といった大きな枠組みの中で、個人の命や幸福が軽視される現実に対して、強い憤りを表明しています。