## ヴォルテールの「哲学書簡」からの学び
イギリスの宗教的寛容について
ヴォルテールは「哲学書簡」の中で、イギリスにおける宗教的寛容のあり方を高く評価しています。彼は、多様な宗派が平和的に共存している様子を目の当たりにし、フランスの宗教的不寛容と比較して、イギリスの社会の自由さ、そしてそれがもたらす経済的な繁栄を称賛しました。
具体的には、クエーカー教徒の質素ながらも勤勉な生活態度、ユダヤ教徒の金融業での活躍、そして異なる宗派が互いの信仰を尊重しつつも、国家への忠誠という共通の価値観のもとで団結している様子を具体的に描写しています。
しかし、ヴォルテールは単にイギリスの宗教的寛容を賞賛するだけでなく、その背後にある歴史的な経緯や社会的な要因についても考察しています。彼は、イギリスが宗教改革や市民革命を経て、絶対王政とカトリック教会の権威から脱却した歴史に注目し、それが宗教的自由の土壌を育んだと分析しています。
政治体制と個人の自由について
ヴォルテールは、イギリスの議会政治と立憲君主制を高く評価し、フランスの絶対王政と比較して、個人の自由と権利が保障されている点を強調しました。彼は、権力が分散され、市民が政治に参加する権利を持つことで、暴政が抑制され、社会全体の幸福が促進されると考えました。
特に、ヴォルテールはイギリスの議会における論争や、新聞などを通じて行われる政治批判の自由に着目し、それが政治腐敗を防ぎ、政府の責任を追及する上で重要な役割を果たしていると指摘しています。
しかし、ヴォルテールはイギリスの政治体制を理想化していたわけではありません。彼は、貴族政治の弊害や、貧富の格差の問題にも目を向け、イギリス社会が抱える課題についても言及しています。