ヴィトゲンシュタインの論理哲学論考を読んだ後に読むべき本
解説
ヴィトゲンシュタインの『論理哲学論考』は、西洋哲学の歴史の中でも最も重要な著作の一つとされながらも、その難解さゆえに読者を深い困惑へと突き落とす作品として知られています。そこで、この難解な書を理解するために、そしてヴィトゲンシュタインの思想をより深く探求するためにおすすめなのが、ラッセル・バートランドの『数学の原理』です。
『数学の原理』を読むべき理由
『論理哲学論考』において、ヴィトゲンシュタインは、論理と数学の関係、言語と世界の関係について独自の考察を展開しています。彼は、論理的な命題は世界の写像ではなく、世界を記述するための枠組みであると主張し、言語の限界と可能性を探求しました。
バートランド・ラッセルの『数学の原理』は、『論理哲学論考』に大きな影響を与えた作品の一つとして知られています。ラッセルは、数学を論理学に還元しようと試み、その過程で論理記号を用いた形式的な論理体系を構築しました。
二つの著作の関連性
『数学の原理』を読むことで、ヴィトゲンシュタインの論理学に対する深い理解を得ることができ、『論理哲学論考』で展開される複雑な議論をより明確に把握することが可能となります。具体的には、以下の3点が挙げられます。
1. **論理記号の理解**: ヴィトゲンシュタインは、『論理哲学論考』において、ラッセルが発展させた論理記号を用いて自身の論理観を展開しています。『数学の原理』を読むことで、これらの記号の定義や使用方法を理解し、ヴィトゲンシュタインの論理に関する主張をより正確に解釈することができます。
2. **論理 atomism との対峙**: ラッセルは、世界は論理的に分析可能な原子的事実から成り立つという「論理 atomism」を主張しました。ヴィトゲンシュタインは、初期にはこの考え方に共鳴を示していましたが、『論理哲学論考』では、この立場を批判的に検討し、独自の言語観を展開しています。ラッセルの著作を読むことで、ヴィトゲンシュタインが何を批判し、どのように自身の立場を確立していったのかをより深く理解することができます。
3. **数学の基礎付け**: ヴィトゲンシュタインは、ラッセルの数学の基礎付けの試みに対しても、独自の視点から批判を加えています。『数学の原理』におけるラッセルの議論を理解することで、ヴィトゲンシュタインの数学に対する哲学的な立場、そしてそれが『論理哲学論考』でどのように展開されているのかを理解することができます。
『数学の原理』を読む上での注意点
『数学の原理』は、『論理哲学論考』と同様に難解な書物として知られており、読破には相当な時間と労力を要します。しかし、その困難を乗り越え、ラッセルの論理学と数学に対する深い洞察に触れることで、ヴィトゲンシュタインの思想世界の理解はより一層深まることは間違いありません。