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ヴィトゲンシュタインの論理哲学論考の思想的背景

ヴィトゲンシュタインの論理哲学論考の思想的背景

思想的源流:論理主義、フレーゲ、ラッセル

 ヴィトゲンシュタインの『論理哲学論考』は、20世紀初頭の分析哲学、特に論理主義の強い影響下で書かれました。論理主義は、数学の基礎を論理学に還元することを目指す思想であり、代表的な論理主義者であるゴットロープ・フレーゲとバートランド・ラッセルは、ヴィトゲンシュタインに多大な影響を与えました。

フレーゲの概念記法と論理の探求

 フレーゲは、数学の基礎を論理によって確固たるものとすべく、厳密な論理体系を構築しようとしました。彼はそのために、自然言語の曖昧さを排除し、論理的な推論を明確に表現できる人工言語である「概念記法」を開発しました。ヴィトゲンシュタインは、フレーゲの概念記法に深く影響を受け、『論理哲学論考』においても独自の論理記法を用いて命題の構造を分析しています。

ラッセルのタイプ理論と論理的原子論

 ラッセルもまた、数学の論理的基礎付けを目指し、『数学の原理』において、集合論のパラドックスを回避するための「タイプ理論」を提唱しました。ラッセルはさらに、世界は論理的に分析可能な「原子事実」から構成されているという「論理的原子論」を展開しました。ヴィトゲンシュタインは、ラッセルのタイプ理論と論理的原子論の両方に影響を受け、『論理哲学論考』において、世界は事実の総体であるとし、事実を構成する要素として単純対象を想定しました。

他の思想的影響:キルケゴール、ショーペンハウアー

 ヴィトゲンシュタインは、論理主義者以外にも、セーレン・キルケゴールやアルトゥル・ショーペンハウアーといった思想家の影響を受けています。特に、キルケゴールの実存主義的な思想や、ショーペンハウアーの厭世観は、『論理哲学論考』における倫理、価値、人生の意味といった問題への関心に影響を与えた可能性があります。しかし、これらの影響については、ヴィトゲンシュタイン自身の著作において明確な言及がないため、推測の域を出ません。

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