## ワルラスの純粋経済学要論と時間
### ワルラス経済学における時間の扱い
レオン・ワルラスの主著『純粋経済学要論』(Éléments d’économie politique pure)は、一般均衡理論の基礎を築いた画期的な著作として知られています。しかし、その時間に関する扱いは、後の経済学者から様々な解釈や批判を生み出す原因ともなりました。
### 静学的な均衡分析
ワルラスの分析の中心は、市場における需給の一致によって成立する均衡状態の解明にあります。彼は、市場メカニズムが需要と供給を調整し、最終的に均衡価格へと導くプロセスを詳細に分析しました。
### 時間の概念の欠如
ワルラスの均衡分析は、時間という要素を明確に考慮していません。彼のモデルでは、全ての取引は同時に行われ、価格調整も瞬時に完了すると仮定されています。
### タートンヌマン調整過程
ワルラスは、均衡価格への到達プロセスを説明するために、架空の「競売人」による調整過程を導入しました。この過程では、競売人が様々な価格を提示し、需要と供給のバランスが取れるまで価格の調整を繰り返します。
### 時間要素の曖昧性
ワルラス自身は、タートンヌマン調整過程が現実の時間経過を表すものではないことを認めていました。しかし、彼の著作における時間に関する記述は曖昧であり、後の経済学者による様々な解釈を生み出す原因となりました。
### 動学化の試みと限界
ワルラスの均衡理論は、時間という要素を明確に組み込んでいないため、現実の経済現象を説明するには限界があります。後の経済学者たちは、ワルラスの理論に時間要素を導入し、より動学的な分析を展開しようと試みました。