## ワトソンの行動主義の観点からの思索
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行動主義の基礎
ジョン・B・ワトソンは、20世紀初頭に心理学に革命をもたらした行動主義の創始者として知られています。彼は、心理学が真の科学として認められるためには、観察可能な行動に焦点を当てるべきだと主張しました。当時の心理学は、内観に基づいた意識の研究が主流でしたが、ワトソンは意識や思考といった内的プロセスを客観的に測定することが不可能であると批判しました。
ワトソンにとって、人間の行動はすべて環境からの刺激に対する反応として理解できました。彼は、「私に12人の健康な赤ん坊を与えてくれ。私が環境をコントロールすれば、その子たちを医者、弁護士、芸術家、商人、そして物乞いや泥棒にでも、自分の望むどんな人物にも育ててみせる」という有名な言葉を残しています。この言葉は、人間の行動が遺伝よりも環境によって決定づけられるという、彼の強い信念を表しています。
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古典的条件付けと行動の形成
ワトソンの行動主義の中心には、イワン・パブロフの古典的条件付けの理論がありました。パブロフは、犬に餌を与えるときにベルの音を聞かせ続けることで、ベルの音だけで唾液を分泌するようになることを発見しました。これは、もともと無関係な刺激(ベルの音)が、特定の反応(唾液分泌)を引き起こす刺激(餌)と結びつくことで、条件反射が形成されることを示しています。
ワトソンは、この古典的条件付けの原理が人間の行動にも当てはまると考えました。彼は、人間の感情や恐怖も、環境からの刺激に対する条件付けによって学習されると主張しました。有名な「アルバート坊やの実験」では、ワトソンは生後11ヶ月の乳児アルバートに、白いラットを見せながら大きな音を聞かせることで、ラットに対する恐怖反応を条件付けました。この実験は、人間の感情が環境からの学習によって形成されることを示唆するものとして、行動主義の歴史において重要な位置を占めています。
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行動主義の限界と影響
ワトソンの行動主義は、心理学における客観的な研究方法の確立に大きく貢献しました。彼の理論は、学習や行動療法など、現代の心理学の多くの分野に影響を与えています。しかし、人間の行動を環境からの刺激に対する反応としてのみ捉える、彼の単純化された見方には限界があることも指摘されています。