## ワトソンの行動主義の観点からの思想的背景
###
動物心理学の影響
ワトソンの行動主義は、当時の動物心理学の隆盛を抜きにして語ることはできません。19世紀後半から20世紀初頭にかけて、動物の行動を客観的に研究しようとする動きが活発化していました。特に、パブロフの古典的条件付けの発見は、動物の学習メカニズムの一端を明らかにし、行動主義の理論的基礎となる重要な概念を提供しました。ワトソンは、人間の行動も動物と同様に、環境との相互作用によって形成されると考え、動物実験の手法を人間にも応用することで、人間の行動を科学的に解明できると主張しました。
###
機能主義心理学からの批判的継承
ワトソンの行動主義は、当時の心理学界を席巻していた機能主義心理学への批判から生まれました。機能主義心理学は、意識の機能を研究対象とすることを主張していましたが、ワトソンは、意識は観察不可能であり、科学的な研究対象にはなり得ないと批判しました。代わりに、客観的に観察可能な行動のみを研究対象とすることで、心理学を真の科学に昇華できると考えました。
###
実用主義の影響
ワトソンの行動主義は、当時のアメリカで台頭していた実用主義の思想とも深く関わっていました。実用主義は、知識の有用性を重視し、理論よりも実践的な価値を重視する思想です。ワトソンは、行動主義は人間の行動を予測し制御するための実用的な知識を提供すると主張し、教育や精神療法などの応用分野においても大きな可能性を秘めていると主張しました。