ワットの蒸気機関の改良
改良点
ジェームズ・ワットは蒸気機関を発明した人物として広く知られていますが、それは正確ではありません。ワットの功績は、1760年代から1770年代にかけて、それ以前から存在していた蒸気機関を大幅に改良したことにあります。
ニューコメン機関との比較
ワット以前、最も普及していた蒸気機関はトーマス・ニューコメンが1712年頃に開発したニューコメン機関でした。ニューコメン機関は大気圧を利用してピストンを動かす方式で、主に鉱山の排水に用いられていました。しかし、ニューコメン機関は熱効率が悪く、大量の燃料を消費していました。
ワットによる改良点
ワットはグラスゴー大学で器具製作者として働いていた際に、ニューコメン機関の模型を修理する機会を得ました。彼はニューコメン機関の欠点に気づき、改良に取り組み始めました。ワットによる主な改良点は以下の通りです。
* **分離凝縮器の導入**: ニューコメン機関では、シリンダー内で蒸気を冷却して凝縮させていましたが、これによりシリンダー自体が冷却され、熱効率が低下していました。ワットはシリンダーとは別に凝縮器を設けることで、シリンダーの温度を高く保ち、熱効率を大幅に向上させました。
* **シリンダー両面の利用**: ニューコメン機関はピストンの片側だけに蒸気を作用させる単動式でしたが、ワットは両側に蒸気を作用させる複動式にすることで、出力の向上と回転運動の安定化を実現しました。
* **回転運動への変換**: ニューコメン機関は上下運動しかできませんでしたが、ワットは遊星歯車機構などを用いることで、回転運動を取り出すことを可能にしました。
改良の成果
これらの改良により、ワットの蒸気機関はニューコメン機関に比べて燃料消費量が大幅に減少し、より小型化、高出力化されました。その結果、ワットの蒸気機関は工場の動力源として広く普及し、産業革命の進展に大きく貢献しました。