## ワイルドの獄中記と作者
作者と「獄中記」の関係
オスカー・ワイルドは、1895年から1897年にかけて、レディング監獄とワンズワース監獄で「重大な猥褻」の罪で服役しました。この獄中体験は、ワイルドに大きな影響を与え、「獄中記」を含むいくつかの作品を生み出すことになりました。
「獄中記」の概要
「獄中記」は、ワイルドが獄中で経験した苦しみや屈辱、そして自己を見つめ直す過程が赤裸々に綴られた作品です。 当初は、獄中での友人であったロバート・ロスに宛てた長文の手紙として書かれました。この手紙は、ワイルドの死後、ロスの編集により「De Profundis」（ラテン語で「深淵より」の意）というタイトルで一部が出版されました。その後、1962年に完全版が出版されました。
「獄中記」における作者の心情
「獄中記」の中で、ワイルドは、自身の置かれた状況への怒りや絶望、恋人であるアルフレッド・ダグラスへの愛憎入り混じる複雑な感情、そして、苦難を通して得た自己認識などを吐露しています。 特に、ダグラスへの感情は、彼を「芸術の体現者」として崇拝する一方で、その無責任さや傲慢さへの激しい怒りをぶつけるなど、複雑な様相を呈しています。
「獄中記」の文学史における位置付け
「獄中記」は、19世紀末のイギリス文学における重要な作品の一つとされています。個人的な経験に基づいた率直な告白文学であると同時に、社会の偽善や不条理を告発する社会批判の書としての側面も持ち合わせています。 また、ワイルド特有の華麗な文体で綴られており、文学作品としての評価も高い作品です。