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ワイルドの幸福な王子の思想的背景

## ワイルドの幸福な王子の思想的背景

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社会主義思想

ワイルドは「幸福な王子」の発表当時、急激に台頭していた社会主義思想に強い関心を抱いていたことが知られています。彼は1891年に発表したエッセイ「魂の社会主義の下に」の中で、資本主義社会における貧富の格差や労働者階級の窮状を痛烈に批判し、芸術と美を通じて社会を変革していくという独自の社会主義思想を展開しました。

「幸福な王子」では、金箔に覆われ、宝石で飾られた王子像が、街の貧しい人々の姿を見て心を痛め、ツバメに命じて自分の装飾品を分け与えるよう頼みます。この王子像の姿は、自らの富や地位に無頓着で、弱者への深い同情心と自己犠牲の精神を持つ理想的な社会主義者の姿として解釈することができます。

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キリスト教的モチーフ

「幸福な王子」には、キリスト教的な自己犠牲や隣人愛のテーマが色濃く反映されています。特に、王子が自身の目や宝石を貧しい人々に与え、最後はボロボロの姿になってしまう姿は、人類の罪を一身に背負って十字架にかけられたイエス・キリストの姿を彷彿とさせます。

また、王子像の足元で献身的に尽くすツバメの姿は、キリストに仕えた聖人の姿と重ね合わせることができます。ツバメは王子の願いを叶えるために、厳しい冬が近づいても街に留まり、自分の命を犠牲にして奉仕を続けます。

このように、「幸福な王子」は、キリスト教的な自己犠牲と隣人愛の精神を、当時の社会問題と結びつけることで、読者に深い倫理的問いを投げかけています。

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