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ロンブローゾの犯罪人

ロンブローゾの犯罪人

チェーザレ・ロンブローゾ 犯罪人論

1876年に出版されたチェーザレ・ロンブローゾの著書「L’uomo delinquente」(犯罪人論)は、犯罪学の歴史において極めて重要な、しかし同時に大きな論争を巻き起こした著作です。ロンブローゾは本書において、犯罪者の身体的特徴、精神的特徴、そして社会的な背景などを詳細に分析し、「生まれながらの犯罪者」という概念を提唱しました。

「生来の犯罪人」という概念

ロンブローゾは、犯罪者は進化の過程で取り残された原始的な段階の人間であり、通常の進化を遂げた人間とは異なる身体的特徴を持つと主張しました。彼は、犯罪者の顔つき、頭蓋骨の形、身体のサイズ、入れ墨などを分析し、これらの特徴が原始的な人間と共通していると結論づけました。

身体的特徴と犯罪の関連性

ロンブローゾが犯罪者の特徴として挙げたものには、大きな顎、低い額、長い腕、過剰な体毛などがあります。彼は、これらの特徴が原始人の特徴と共通しており、犯罪者の生物学的な劣等性を示していると主張しました。

「犯罪人論」の影響と批判

ロンブローゾの「犯罪人論」は、出版当時大きな反響を呼び、多くの支持者を集めました。彼の理論は、当時の社会に蔓延していた人種差別や社会ダーウィニズムと合致するものであり、犯罪者の特定や犯罪予防に科学的な根拠を与えるものとして受け入れられました。

しかし、彼の理論は、偏見に基づいた非科学的なものであるという批判も強く浴びました。ロンブローゾの研究方法は、現代の科学的基準から見ると、サンプル数が少なく、対照群の設定も不十分であり、結論を導き出すためのデータの解釈も恣意的であったと指摘されています。

現代におけるロンブローゾ

現代の犯罪学では、ロンブローゾの「生まれながらの犯罪者」という概念は否定されています。犯罪は、生物学的要因だけでなく、心理的、社会的、経済的な要因など、様々な要因が複雑に絡み合って起こると考えられています。

しかし、ロンブローゾの犯罪に対する生物学的要因への着目は、その後の犯罪学研究に大きな影響を与えました。彼の研究は、犯罪の要因を科学的に解明しようとする試みの先駆けとなり、現代の犯罪学の発展に一定の貢献をしたと言えるでしょう。

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