## ロンブローゾの犯罪人を面白く読む方法
ロンブローゾの「犯罪人」は、現代の視点から見ると時代遅れで偏見に満ちた内容に思えるかもしれません。しかし、当時の社会状況や学問の潮流を踏まえ、少し視点を変えて読んでみると、意外な面白さが見えてきます。
1. ロンブローゾが生きた時代背景を考える
19世紀後半は、ダーウィンの進化論が社会に大きな影響を与えた時代でした。ロンブローゾは、人間の身体的特徴と精神的特徴は進化の過程と密接に関係するという考えに基づき、「生まれながらの犯罪者」という概念を提唱しました。これは、犯罪者の顔つきや身体的特徴を観察することで、彼らを一般人から見分けることができると考えたのです。
現代の私たちは、犯罪の原因は社会環境や教育、経済状況など、複雑な要因が絡み合っていることを知っています。しかし、当時の社会では、進化論の影響もあり、人間の行動は生まれ持った性質によって決まると考える人々が少なくありませんでした。
ロンブローゾの著作を読む際には、このような時代背景を念頭に置くことが重要です。彼の主張は、現代の科学的知見から見ると誤っている部分が多くありますが、当時の社会状況や学問の潮流を反映したものであり、歴史的な資料として読むことで、19世紀後半の人々の思考や社会の雰囲気を垣間見ることができます。
2. ロンブローゾの主張の矛盾点や問題点を探す
ロンブローゾは、膨大な数の犯罪者の身体的特徴を観察し、統計データを用いて自らの学説を証明しようとしました。しかし、彼の主張には、現代の視点から見ると多くの矛盾点や問題点が存在します。
例えば、彼は「犯罪者は原始的な人類の特徴を残している」と主張しましたが、その根拠は曖昧で、客観的なデータに基づいたものではありませんでした。また、彼の研究対象は、主にイタリアの刑務所に収監されている犯罪者に限られており、サンプルの偏りも指摘されています。
ロンブローゾの著作を読む際には、彼の主張を鵜呑みにするのではなく、批判的な視点を持って読み進めることが大切です。彼の論理展開の矛盾点や問題点を発見することで、当時の学問の限界や、偏見に基づいた主張の危うさを認識することができます。
3. ロンブローゾの功績と影響力にも目を向ける
ロンブローゾの「犯罪人」は、今日の視点で見ると問題のある部分が多いものの、犯罪学という学問分野の発展に大きな影響を与えたことは事実です。彼は、犯罪の原因を人間の生物学的側面から探ろうとした先駆者であり、その後の犯罪学研究に多大な影響を与えました。
また、ロンブローゾは、犯罪者の社会復帰の必要性を訴えたことでも知られています。彼は、犯罪者を単なる「生まれながらの悪人」と決めつけるのではなく、彼らを社会に復帰させるための教育や更生プログラムの重要性を主張しました。
ロンブローゾの著作を読む際には、彼の主張の負の側面だけでなく、犯罪学への貢献や社会復帰への意識など、正の側面にも目を向けることが重要です。彼の功績と影響力を理解することで、「犯罪人」という書が、単なる偏見に満ちた書物ではなく、犯罪学の歴史における重要なターニングポイントとなった作品であることが理解できるでしょう。