ロンブローゾの犯罪人を読んだ後に読むべき本
犯罪生物学から文化犯罪学へ:ロンブローゾを超えて
チェーザレ・ロンブローゾの『犯罪人』は、犯罪学の歴史において極めて重要な著作です。しかし、その生物学的決定論に基づいた主張は、今日の視点から見ると多くの問題点を含んでいます。ロンブローゾは、犯罪者の身体的特徴によって犯罪傾向を予測できると考えましたが、その後の研究によって、彼の理論は科学的根拠に乏しいことが明らかになっています。
『文化と犯罪』:犯罪の社会的要因に焦点を当てる
ロンブローゾの犯罪観を批判的に検討し、現代の犯罪学を理解するためには、犯罪の社会的、文化的要因に焦点を当てた著作を読むことが重要です。その代表的な例として、ソーンスティン・ヴェブレンの『有閑階級の理論』を挙げることができます。
ヴェブレンの消費理論:犯罪と社会的不平等
ヴェブレンは、人間は経済的合理性に基づいて行動するという古典経済学の仮定を批判し、社会的地位や名誉欲が消費行動を大きく左右すると主張しました。彼は、人々が他者との比較の中で自らの地位を誇示するために、贅沢な消費を行うことを「顕示的消費」と呼びました。
顕示的消費と犯罪
ヴェブレンの理論は、犯罪の発生メカニズムを理解する上でも重要な視点を提供します。社会的に排除され、経済的に困窮している人々は、正当な手段では達成できない「成功」を、犯罪によって得ようとする可能性があります。彼らは、高価な車やブランド品を身につけることで、自らの社会的地位を誇示し、周囲からの承認を得ようとするかもしれません。
ロンブローゾを超えて:犯罪の社会的背景を考える
ロンブローゾは、犯罪者の生物学的特徴に注目しましたが、ヴェブレンの理論は、犯罪の背景にある社会構造や文化的な要因に目を向けさせてくれます。現代の犯罪学では、貧困、差別、教育格差など、犯罪を誘発する様々な社会的要因が指摘されています。
犯罪の理解を深めるために
『有閑階級の理論』を読むことで、私たちは、犯罪を個人の生物学的特性に還元するのではなく、社会的不平等や文化的な価値観との関連で捉えることの重要性を認識することができます。ロンブローゾの著作を読んだ後には、ぜひヴェブレンの古典に触れ、犯罪に対する理解を深めていただければと思います。