## ロビンソンの資本蓄積論の価値
価値1:新古典派成長理論への批判
ジョーン・ロビンソンの主著『資本蓄積論』(1956)は、当時の経済学界を席巻していた新古典派成長理論、特にソローモデルに対する痛烈な批判として位置づけられます。ロビンソンは、資本を単一の生産要素として集計することの理論的な問題点を指摘し、資本財の異質性を無視した集計的な生産関数の利用は、資本蓄積と分配の関係を曖昧にするものであると主張しました。
価値2:ケンブリッジ資本論争への貢献
ロビンソンの資本蓄積論は、1960年代に巻き起こった「ケンブリッジ資本論争」の火付け役となりました。この論争は、資本財の性質や測定方法をめぐり、ロビンソンらケンブリッジ大学の経済学者と、ソローらマサチューセッツ工科大学の経済学者の間で繰り広げられました。ロビンソンの提起した問題は、資本理論における根本的な問題を浮き彫りにし、その後の経済学研究に大きな影響を与えました。
価値3:マルクス経済学への再評価を促す
ロビンソンは、資本蓄積論の中でマルクス経済学の一部概念を再解釈し、独自の理論構築を試みました。特に、資本の有機的構成の上昇と利潤率の傾向的な低下の法則に関するマルクスの分析を、現代経済学の枠組みで再検討しました。彼女の著作は、マルクス経済学に対する新たな視点を提供し、その後のマルクス経済学研究の活発化に貢献しました。
価値4:長期的な経済分析への示唆
ロビンソンは、短期的な均衡分析ではなく、長期的な資本蓄積と分配の関係に関心を持ち続けました。彼女は、技術進歩、人口増加、賃金交渉などが資本蓄積に与える影響を分析し、経済成長の持続可能性について考察しました。彼女の長期的な視点からの分析は、今日の経済学においても重要な示唆を与え続けています。