## ロビンソンの資本蓄積論と言語
ロビンソンの資本蓄積論における言語の役割
ジョーン・ロビンソンの主著『資本蓄積論』(1956年)は、ケインズ経済学を基盤に、資本主義経済における成長と分配の問題を、時間を通じた動学的な視点から分析したものです。ロビンソンはこの著作において、従来の新古典派経済学が前提としてきた完全競争や完全予見といった非現実的な仮定を批判し、より現実的な分析を試みました。
言語の曖昧さと経済分析
ロビンソンは、経済学における言語の曖昧さが分析を困難にしている点を繰り返し指摘しました。特に、資本、利潤、生産関数といった概念は、その定義や解釈が論者によって異なり、議論がかみ合わない原因となっています。彼女は、このような曖昧さを解消するために、厳密な論理と明確な定義を用いることの重要性を強調しました。
資本論争における言語の重要性
ロビンソンの『資本蓄積論』は、1960年代に展開された「資本論争」の主要な発端となりました。この論争は、資本主義経済における資本の概念や測定方法をめぐって、新古典派経済学者と、ロビンソンをはじめとするケインズ経済学者との間で繰り広げられました。ロビンソンは、この論争においても、言語の曖昧さが議論を混乱させていると批判し、明確な定義に基づいた分析の必要性を訴えました。
経済モデルと言語の限界
ロビンソンは、経済モデルが現実を単純化したものであることを認識しており、言語の限界についても自覚していました。彼女は、経済学が数学を用いることで厳密性を増す一方で、現実の複雑さを十分に捉えきれない側面もあることを指摘しています。