ロックの統治二論の普遍性
ロックの自然状態と自然法
ジョン・ロックは、17世紀イギリスの哲学者であり、『統治二論』において、政治社会の起源、正当性、そして目的について考察しました。ロックの議論の中心となる概念は、「自然状態」と「自然法」です。
ロックは、人間は本来、いかなる政治的な権力にも従属していない「自然状態」において自由で平等であると主張しました。この自然状態は、無秩序や無法状態を意味するのではなく、すべての人が「自然法」に従って生きる状態を指します。自然法とは、理性によって認識できる、生命、自由、財産を含む基本的な権利を保障するものです。
統治の根拠と制限
ロックによれば、自然状態における問題は、各自が自然法の執行者となるために、権利侵害や紛争が生じる可能性があることです。そこで、人々は、より安全で安定した社会を実現するために、社会契約によって政治社会を形成し、政府に統治を委ねます。
しかし、政府の権力は、人々が自然状態で持っていた権利を保障するために付与されたものであり、決して絶対的なものではありません。政府は、被治者の同意に基づき、自然法の範囲内で統治を行う義務を負います。もし政府が、人々の権利を侵害したり、専制的な支配を行ったりするならば、人々は抵抗する権利を持つとロックは主張しました。
普遍性と限界
ロックの統治二論は、人間の理性と自然権に基づいて、政治的な権威の根拠と限界を明確に示した点で画期的であり、近代 liberal democracy の思想に大きな影響を与えました。しかし、以下のような批判も存在します。
* ロックの自然状態は、歴史的な根拠に乏しく、抽象的な仮説に過ぎないという批判があります。
* ロックは、自然権を「生命、自由、財産」に限定していますが、現代社会においては、社会権や環境権など、考慮すべき権利は多岐に渡ります。
これらの批判を踏まえつつ、ロックの統治二論が提示する、人間の自由と平等、そして政府の権力に対する制限という理念は、現代社会においてもなお重要な意義を持ち続けていると言えるでしょう。