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ロックの統治二論の光と影

## ロックの統治二論の光と影

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人民主権と抵抗権

ジョン・ロックの『統治二論』は、近代政治思想の古典として、近代民主主義の基礎を築いた重要な著作として知られています。特に、人民主権論と抵抗権の思想は、後のアメリカ独立宣言やフランス人権宣言に大きな影響を与え、近代市民革命の思想的支柱となりました。

ロックは、国家が成立する以前の「自然状態」において、全ての人間は生まれながらにして自由で平等であり、「自然権」を有すると考えました。自然権には、生命、自由、財産に対する権利が含まれます。人々は、自らの自然権を守るために社会契約を結び、政府を設立します。しかし、政府がその権力を濫用し、人民の自然権を侵害するような場合には、人民は政府に抵抗する権利を有するとしました。

この抵抗権の思想は、専制君主の支配を正当化する「王権神授説」が支配的であった当時としては、非常に画期的なものでした。ロックの思想は、国民が主権者として政治に参加し、政府の権力を制限する権利を持つという、近代民主主義の根幹をなす思想を提示しました。

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所有権と不平等

一方で、ロックの思想は、現代の視点から見ると、いくつかの問題点も指摘されています。特に、所有権に関する議論は、その後の資本主義社会における経済的不平等を正当化する根拠として利用されたという側面があります。

ロックは、労働によって土地や資源を私有化する権利を自然権の一部として認めました。しかし、この所有権の概念は、結果的に富の集中と社会的不平等をもたらす可能性を孕んでいます。

実際、ロックの思想は、17世紀後半から18世紀にかけてイギリスで進行した「囲い込み」運動を正当化する根拠として利用されました。囲い込み運動は、それまで共有地として利用されていた土地を私有地化し、農民を土地から追い出すことで、資本主義的な農業経営を促進しました。

また、ロックは奴隷制を明確に否定しなかったことも、批判の対象となっています。彼は、捕虜が労働と引き換えに生命を保障される「契約上の奴隷」を容認する一方で、生まれながらにして奴隷となる「自然的な奴隷」は存在しないと主張しました。しかし、実際には、植民地における奴隷制が、ロックの所有権の概念を拡大解釈することで正当化されていきました。

このように、ロックの『統治二論』は、近代民主主義の礎を築いた一方で、その後の資本主義社会における不平等や奴隷制を正当化する根拠としても利用されました。彼の思想は、現代社会においてもなお議論の的となっており、その光と影を深く理解することが重要です。

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