ロックの統治二論から学ぶ時代性
ロックの統治二論における歴史的背景
ジョン・ロックが「統治二論」を執筆した17世紀後半のイギリスは、政治的にも社会的にも激動の時代でした。清教徒革命を経て王政が復活したものの、ジェームズ2世の治世下ではカトリック優遇政策や専制的な政治が行われ、国民の不満が高まっていました。このような時代背景の中、ロックは「統治二論」において、国民の自然権に基づく抵抗権や議会政治の正当性を主張したのです。
自然権と社会契約論
ロックは、人間は生まれながらにして「自然権」を有すると考えました。自然権とは、生命、自由、財産に対する権利であり、いかなる権力によっても侵害されるべきではありません。しかし、自然状態では権利の侵害が起こる可能性があるため、人々は互いに協力し、社会を形成します。これがロックの社会契約論です。
抵抗権と革命の正当化
ロックは、統治者が被治者の同意なく権力を濫用する場合、人民は抵抗する権利を有すると主張しました。これは、当時のイギリスにおける王権神授説に対する痛烈な批判であり、名誉革命を正当化する理論的根拠となりました。
所有権と労働価値説
「統治二論」で展開されたロックの所有権論は、後の資本主義経済の思想的基盤となりました。ロックは、人間は自身の労働によって自然物の所有権を獲得すると主張しました。これは、労働が価値を生み出すという「労働価値説」の萌芽と見なすことができます。
「統治二論」の影響と限界
ロックの思想は、イギリスのみならず、アメリカ独立宣言やフランス人権宣言など、近代市民革命や民主主義の発展に多大な影響を与えました。彼の思想は、個人の自由と権利を擁護し、権力の制限と分立を訴えるものであり、現代社会においても重要な意味を持ちます。しかし、所有権に関する議論は、後の資本主義社会における経済的不平等を正当化する根拠として利用された側面も否定できません。