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ロックの政府論の構成

ロックの政府論の構成

第一編 政治権の起源と範囲について

 第一編では、ロバート・フィルマーの『父権論』(Patriarcha)に反論する形で、政治権力の根拠と限界について論じられています。フィルマーは、アダムの絶対的な支配権が父親から長男へと継承されていき、現存する君主の権力はそれに由来するという家父長制的な政治思想を展開し、王権神授説を擁護しました。

 ロックはまず、自然状態における人間の権利として「自然権」を想定します。自然権とは、すべての人間が生まれながらにして平等に持ち、他者の生命・自由・財産を侵害してはならないという義務と、法を執行する権利を指します。そして、聖書を根拠に、自然状態ではすべての人間が自由で平等であり、父親といえども子どもに対して絶対的な権力を持つわけではないと主張します。

 次に、自然状態においては、自分の自然権を侵害した者に対して、自ら罰を科すことができる「自然法」が有効であると説明します。しかし、復讐心が過剰な懲罰を生み出したり、自己判断による刑罰が私的な闘争を招き、社会が不安定になる可能性を指摘します。そこで、こうした不都合を解消し、自然権をより確実に保障するために、人々は契約によって政治社会を形成し、政府を設立したのだと論じます。

 ロックは、人々が契約によって政府に委ねるのは、あくまで自然権を侵害から守るためであり、被治者は政府の行為が自然権と両立するかどうかを判断する権利を保持していると主張します。そして、政府が自然権を侵害したり、公共の福祉のために活動しなくなった場合には、人民は政府を解体し、新たな政府を設立する権利である「抵抗権」を持つとしました。

第二編 市民政府論

 第二編では、第一編で示された政治思想を踏まえ、望ましい統治の形態について論じられています。

 ロックは、立法権・執行権・対外権という三つの権力を想定します。そして、立法権は、人民の同意に基づいて法律を制定する最高の権力であり、常に人民に帰属すると考えました。また、執行権は、立法権によって制定された法律を執行する権力であり、対外権は、外国と条約を締結したり、戦争や平和を決定する権力です。

 その上で、立法権と執行権を分離することで、権力の集中による専制を防ぎ、自由な政治体制を実現できると主張しました。さらに、被治者の財産権を重視し、課税には被治者の同意が不可欠であると論じました。

 このように、ロックは、市民社会における個人の権利と自由を擁護し、権力分立や議会制民主主義といった近代立憲主義の基盤となる思想を展開しました。

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