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ロックの政府論が扱う社会問題

## ロックの政府論が扱う社会問題

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自然状態における問題点

ロックは、政府が存在しない「自然状態」を仮定することから議論を始めます。自然状態では、全ての人間は生まれながらにして自由で平等であり、生命、自由、財産に対する自然権を有しています。しかし、この自然状態には、いくつかの問題点が存在するとロックは指摘します。

第一に、自然法を解釈し、執行する共通の権力が存在しないため、個人の権利が侵害される可能性があります。自然状態では、各人が自分の権利を解釈し、侵害者に対して自ら罰を科すことができます。しかし、感情的な判断や報復の連鎖が発生しやすく、客観的な判断や公正な処罰が難しい状況となります。

第二に、個人の裁量によって自然法が不平等に適用される可能性があります。偏見や私情によって、特定の人物や集団が不利益を被る可能性があり、結果として社会全体の不安定化を招きかねません。

第三に、共同体が形成されにくく、社会の発展が阻害される可能性があります。自然状態では、自己保存と権利の保護が最優先されるため、互いに協力し、共通の目標を達成するための組織や制度が生まれにくい環境となります。

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政府による解決策

こうした自然状態における問題点を解決するために、人々は社会契約によって政府を設立し、一部の権利を委譲するとロックは主張します。政府の役割は、個人の権利を保護し、社会全体の秩序と安全を維持することです。具体的には、立法権、司法権、行政権という三つの権力を政府は担います。

立法権は、社会全体に適用される法律を制定する権力です。司法権は、法律に基づいて紛争を解決し、権利侵害に対して公正な処罰を科す権力です。行政権は、法律を執行し、国内外の脅威から社会を守る権力です。

ロックは、政府の権力は限定されるべきであり、個人の自由と権利を侵害してはならないと強調します。政府の権力の源泉は被治者の同意であり、政府がその権力を乱用した場合、人民は抵抗する権利を有するとしました。

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所有と不平等

ロックは、労働によって私有財産が発生すると考えます。自然状態では、全ての人間は共通の財産である自然資源を所有する権利を平等に有しています。しかし、個人が自身の労働を自然資源に注ぎ込むことで、その資源は私有財産となります。

ただし、ロックは、他者の生存を脅かさない範囲で私有財産を所有することを正当化しています。つまり、全ての人が必要な資源を得られるだけの余剰が存在する限り、私有財産は認められます。

しかし、貨幣経済の発展は、資源の独占や貧富の格差を生み出す可能性を孕んでいます。貨幣は腐敗しないため、無制限に蓄積することが可能となり、一部の人々が過剰な富を所有することになります。その結果、一部の人々は生活に必要な資源を得ることが困難になり、社会不安や不平等が深刻化する可能性があります。

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抵抗権と革命

ロックは、政府が個人の権利を侵害したり、社会契約を破棄した場合、人民は抵抗する権利を有すると主張します。政府の権力は被治者の同意に基づいており、政府がその信頼を裏切った場合、人民は政府に従う義務を負いません。

抵抗権は、政府による専制や暴政から個人の権利と自由を守るための最終手段となります。ただし、抵抗権を行使することは、社会に混乱や不安定をもたらす可能性もあるため、慎重に判断する必要があります。

ロックは、抵抗権を行使する条件として、政府による権利侵害が重大かつ継続的であること、他の手段では状況の改善が見込めないことなどを挙げています。人民は、政府の行為の正当性や抵抗の必要性について、理性に基づいた判断を下さなければなりません。

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